
ピアノを乗せたバイク
レースコースを離れてマン島の田舎道にクルマを走らせていた時のこと。一軒の古びたパブ(写真後ろの建物)から汚ったないバイクが次々と飛び出してきた。古びた軍服のコートに傷だらけのメットをかぶったこの連中は、なんと! バイクのまま店に乗り込み、バイクにまたがってランチを食べていたらしい。店も客も彼等のやりたい放題に大受け。そのうち表に置いてあったピアノが動き出した。サイドカーを改造してピアノを乗せた、彼等のとんでもないバイクが走り出したワケだ。
ご丁寧にピアノの椅子にはタキシード姿でメットをかぶった男が座り、ガンガン鍵盤をたたきながらアップテンポの曲を演奏している。もちろん、こちらも後を追っかけた。
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バイクのスタントチーム
ピアノを弾きながら走り去った連中は、毎年 TT WEEK になるとマン島に現れるバイクのスタントチームだった。レース後、毎日のように開かれるアトラクションで、バイクを使ったサーカスのようなパフォーマンスを見せてくれるそうだ。でも喜んでくれる人がいれば、場所はお構いなし。どこであろうとウィリーで山道を駆け上がったり、強烈なスピンターンを決めたり、自由自在にオフロードバイクを操ってはどこかに走り去ってしまう。
TT WEEK の期間中、私はこのボロボロの軍服コートに身を包んだ連中といろんなところで出会った。その度に彼等の事を詳しく聞きたいと思ったが果たせなかった(誰か彼等のことを知っている人がいたら教えてください)。
写真はクールに決めているが、実は行く手を牛の行列に阻まれて待機中の図。
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バグパイプ パレード
バグパイプといえば「スコットランド」が有名だが、マン島も同じケルトの文化を引き継ぐ土地柄。TT WEEK の日曜日にはさまざまなパレードがあった。
ところで、ダグラスの中心街はけっこうオシャレでビックリした。古い教会の机や椅子を使ってモダンなインテリアに改造したワインバーなんかもあって、これがなかなかかっこいい。正確な名前は忘れてしまったけど、マン島の「家庭画報」みたいな雑誌まで発行されていた。イギリス本土に比べて税金が安いために、名義上の本社をマン島に移している会社もあるとのこと。ダグラスには金持ちが多いんだ、きっと。そういえば、かつてはナイジェル・マンセルも一時マン島に住んでいたんじゃなかたかな?
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マン島ツーリング
TT WEEK のマン島は、ほぼ島の全土、どこにいってもツーリングの人がいます。ある朝、遠くの空に黒い雲がわいて、それが近づくにつれて「どひゃー、イナゴの大集団だ!」とわかる・・・・というと大げさだけど、本当にホント、この時期のマン島では世界中のあらゆるタイプのバイクが島に上陸してくる。
レースはレースでもちろん、毎日、予選や決勝が行われているわけだが、そんなことはお構いなしに、バイカーの聖地でツーリングを楽しんでいるライダーも数多くいる。
「イギリスの湖水地方あたりを走ってから TT WEEK のマン島に来るのがいい」と勧めてくれた人もいた。自由に大地を走る旅。パックツアーとは対極の旅って感じですね。
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パブのテラス
ほとんどのライダーが昼からしっかりビールを飲んでいる。マン島のビールは美味い。なぜ美味いかというと、アイルランドのダブリンから新鮮なギネスビールが届く。島にも小さいけど谷に囲まれた地ビールの醸造所がある。だから、いろんなビールが美味い。
マン島の数少ない名物が「キッパー」と呼ばれる魚のニシン。Peel という港街ではニシン漁の船の横にパブが並ぶ。盛大なフライドポテトとキッパー、それにビール、これがマン島ランチの定番。ちなみに、マン島には地ウイスキーもある。これがウオッカみたいに無色透明で、でも味はしっかりウイスキーという超レアものだった。
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モーターサイクルミュージアム
レースコースのマウンテン区間、ちょうど山を登り切ったあたりにあるのが「モーターサイクルミュージアム」だ。館内は所狭しとばかりに、時代物のバイクと関連したグッズが並べられている。TTレースの歴史を知る上でも是非寄っておきたいミュージアムだ。
板張りされた写真の左上は本田宗一郎。その2つした写真には高橋国光も写っている。ホンダの名を世界に知らしめたのも 1961 年のマン島での優勝が始まりだった。このミュージアムにはホンダの優勝バイクも陳列してあって、館長の話ではミュージアムを訪れた宗一郎が寄贈したということだった(館長さんは宗一郎のことを聞くと、かなり熱く語ってくれる)。 TT レースの土産を買うなら、ダグラスの土産物屋よりも断然このミュージアムがお勧め。ニットの TT 帽子やステッカーなどお宝多し。
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ヴィンテージバイク フェスティバル
TT WEEK のマン島ではレース以外にもさまざまな催しがある。ヴィンテージバイクフェスティバルもそのひとつ。
朝、レースコース脇の公園には、この日のために整備され磨きあげられたヴィンテージバイクが続々と集まってくる。年に一度、このイベントで会うのを楽しみにしているオーナーが多いのか、「やー、やー、元気?」ってな感じで挨拶している。なかには、奥さんをサイドカーに乗せてドイツから来たおじいちゃんなんかもいて、この人達の人生とバイクは本当に大切な関係なんだと、関係ないこちらもホンワカした気持ちにさせられる。
オーナー達が慈しんできたバイクはどれもほんとうに命が宿っているように美しい。
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1913 年ダグラスモデル
公園でひとしきり話に花を咲かせた後、ヴィンテージバイク フェスティバルの参加者は配布されたマップをもとに島を巡るツーリングに出かける。「ランチはどこのパブで食べよう」なんて打ち合わせしているが、なにせ時代物のバイクも多数混じるため、隊列はすぐにバラバラになってしまう。
写真のおじいちゃんのバイクは、ゼッケンナンバー 1 番をつけていることからもわかるように、参加中で最古参のバイク「1913 年ダグラスモデル」。自転車式にペダルをこいでスタートする。ライダーは地元マン島のダグラスに住むそうで、バイクに負けず劣らず年季の入ったジャケットを着て、なんだかしょっちゅう道に迷っていた。「地元の大先輩におせっかいかもしれませんが、全然違う道を走ってますよ」と言う具合に2度ほど道を教えてあげた。
3 回に渡って連載したマン島 TT レースについての報告はこれで終わり。時代から忘れられている TT レースだが、バイク好きはもちろんのこと、誰が行って楽しめるのがマン島だ。
好きなことを心から楽しんでいる大人達を見るだけでも、マン島に行ってよかった。
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