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>> 長屋 レポート


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長屋プロフィール-S.jpg* 長屋 レポート
2006/02/08
長屋宏和プロフィール
今後、東京バリアフリーリポートや福祉車両の試乗記をお届けする、元 F3 レーサー 長屋宏和のプロフィールはこちらから。
心のバリアフリー* 長屋 レポート
2006/03/08
心のバリアフリー
「設備を整え、街全体をバリアフリーに変えていくことは容易い事ではありません。しかし、人の気持ちをバリアフリーに変えていくことはできるはずです。」
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国立身体障害者リハビリテーションセンター
http://www.rehab.go.jp/
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Enjoy W-Car (福祉車両) > 長屋 レポート > クルマを運転することが出来た。

クルマを運転することが出来た。


記事:長屋宏和
写真:津島健太(VividCar.com)

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Update: 2006/05/08
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僕にとって、車を運転することは生活の一部でした。
今まで当たり前のように出来ていた「車を運転する」という楽しみが、レース中の事故で一瞬にして途絶えてしまいました。入院中のベッドの上で、運転が出来ない苦しみが頭の中を充満していました。その頃は、手だけで車を運転する装置の存在を知らず、「もう二度と、楽しかった運転は出来ない」と思い込んでいました。
あるとき、国立身体障害者リハビリテーションセンター内に、頚椎損傷、脊髄損傷、脳卒中などさまざまな障害者のための運転訓練施設があることを知りました。車を運転することは、ほぼ絶望的だと思っていたけれど、この訓練施設で運転できることを知った時は、本当に嬉しかったです。しかし、「僕のこの体で運転が出来るのか?指も使えずにどうやってハンドルを回すのか?ハンドルの重さを回せるのか?」など、当然疑問も生まれました。
国立身体障害者リハビリテーションセンターに入院し、直接手動装置の操作方法や、自分の体に合った車選びなどの指導を受けました。運転が出来た時は感動したし、自分の中にポッカリと空いた穴が塞がった気がしました。その頃お世話になった熊倉良雄氏に、今運転していて気になることなどの質問をぶつけてみました。
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熊倉さんがこの18年間福祉車両に携わってきて、足りない部分についてお聞きしたいです。

いろいろな障害があって、障害名が同じでも障害内容が違います。それぞれの障害内容に合わせた車があれば一番良いけれど、それは難しいのが現実です。
障害者が一人で乗り降りが出来る車があれば、もう少し運転出来る方が増えるかと思います。現場の仕事をしていて感じることは、自動車への乗り降りが一番大変だと言うことです。人によっては15分位かかってようやく乗れる方もいます。頚髄損傷の方で40代や50代になると、運転ができても、乗り降りが大変になります。長屋さんのように、ハンドルを軽くしたり、手動アクセル・ブレーキ装置を考えたりして運転が出来たとしても、車の乗り降りが一人で出来なければ自立にならないと思いますが、それに対応している車は今のところありません。
最近では、乗り降りしやすいように座席が車外に降りてくる車や、車いすの形をしている座席ごと助手席に乗り込むものはあります。これらは一般的に高齢者向けに作られていますので、この技術を応用して、一人では乗り降りが困難な方のために、車いすの機能と安全性を併せ持つ運転座席が開発されることを期待しています。
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現在、車いすのまま運転する車と言うのは日本にはありませんが、それは何故ですか?

アメリカには車いすのまま運転する車はありますが、日本では衝突した時に座席が20Gの衝撃でも壊れないこと、という基準があるので、このタイプの車は認められていないと思います。しかし、技術は進歩しているので、今は出来なくても何年後かには出来るように、地道な活動ではありますが、各自動車会社に現状を説明して働きかけていきたいと思っています。

私としては障害がある方こそ、より安全に乗って欲しいと思っています。きちんとシートベルトもして欲しいし、エアバッグも機能する状態で使ってほしい。「運転さえできれば良い」と言うことだけで、安全に対する装備を取り除くことはして欲しくありません。車と言うのは最悪衝突する危険性がありますので、衝突した時の「安全基準」を優先するのは絶対だと思います。安全基準をしっかり確保しつつ、乗りやすい車をお勧めします。

最近、車いすごと乗り込む福祉タクシーなどのデイサービス車での事故が起きています。運転手はケガひとつなくても、後ろに乗せられた車いすユーザーが、シートベルトをしていないためや、固定が甘いため、ケガをする事故があります。
僕も福祉タクシーに乗った経験があり、ブレーキを掛けたときにグラグラするし、シートベルトをせず、「これ大丈夫かよ」って思いました。

そういうことの指導・教育が足りません。
障害があるからこそ、もっと慎重に対応しなければいけないと思います。

日本では、ホンダ、トヨタ、日産、この3社は、自動車メーカーの責任で自ら運転する方の運転補助装置を作って提供しています。しかし、アメリカでは自動車メーカーではなく、小さな工場が改造して作っています。元々、さまざまな安全基準を満たして設計され認可がおりている車を改造すればリスクが出てしまうし、基準が変わってしまう。日本の3社は真面目に取り組んでくれているけれど、真面目だから進みが遅いのかもしれません。日本の3社は、ブランドを背負っているので、信用を確保しながら、出来る範囲でしか発売していないのだと思います。どうしても海外のような飛び抜けた発想がないのかもしれません。
もの凄く進んだ技術の車が良いとは言い切れません。なぜなら、最先端の技術は確立されていないことが多く、安全性や耐久性が確保されていない場合もあるので、そこだけが心配です。
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熊倉さんが国立身体障害者リハビリテーションセンターで障害者の自動車運転訓練の現場に居て、一番足りないと思うことをお聞きしたいです。

一つは、新たに運転免許を取得する方に対しての客観的な評価が足りないと思います。運転免許を取得して間もない方が「教習所で練習した時に走行中のふらつきが多く、結局、直らないまま免許をとってしまったけど、一人で運転できるか心配なので評価して欲しい」との相談を受けることがあります。
このセンターでは、長屋さんも受けていただいたと思いますが、自動車運転訓練を始める前に全ての方に運転能力検査を実施して、運転能力の評価を行います。目的は、将来、自動車を安全に運転してもらうためには、どこに注意して訓練を進めれば良いのか、また、自動車や運転補助装置の選択によって障害を補うことができるのか、訓練によって補うことができるのかを、あらかじめ把握するために行っています。検査には、運転適性検査器による検査、測定器による運転操作力の検査、自動車を使い障害内容と運転補助装置の適合性の検査、自動車を使い方向感覚・車両感覚・距離感覚などの運転基礎感覚の検査があります。
相談者に運転能力検査を実施したところ、自動車が僅かに曲がったことに気づくことができないため結果としてふらつくことが分かりました。すでに300時限の技能教習を受けて免許を取得したことを考えれば、私としては非常に辛いですけれども、現時点ではふらつきを解決するのは困難なので、運転は控えたほうが良いと助言しました。本人も分かっていたようで、私の助言に十分納得した様子でした。はじめに評価を行っていれば違った結果になったかもしれませんね。残念です。

二つ目は、免許を取得した後に病気やケガで障害を受けた方に対しての、運転の再教育と運転補助装置についての情報提供が足りないと思います。
病気やケガで障害を受けた方が再び運転する場合は、管轄の運転免許試験場で臨時適性検査を受けて合格すると、運転することが可能になります。この際、運転免許証に新たな免許条件が記載されるだけで、新たな運転方法で運転練習を行う制度はありません。ですから、運転方法が変わらなければ問題ないと思いますが、運転方法が変わった場合には、操作の不慣れから起こるミスをなくすために、是非練習してから運転することをお勧めします。
また、自動車や運転補助装置を購入する際にも、運転補助装置に関しての情報提供が足りないので、運転免許に条件が記載されて実際に自動車を購入する段階で、どれを選んだらよいか本当に困ると思います。それぞれの障害内容に合った自動車と運転補助装置の選択方法など、ここのようには誰も教えてくれません。あとは販売店の言いなりになり、販売店が売りたい車を、「大丈夫。大丈夫。出来ますよ。」と、どんどん話を進めていってしまいます。販売店も商売が先にきてしまうと、障害の事を良く分からないのに「何でも出来る。出来る。」と言うものです。長屋さんの場合は、ここで練習する機会があってあらかじめ乗っていたし、この装置では十分に力が入らないということを自分で分かっていたから良かったけれど、正しい情報を知らないと、車が合うか合わないかに関係なく、販売店の言いなりですね。障害が軽ければ関係なくても、重くなればなるほど、その人に応じた自動車や運転補助装置を慎重に選択しないと、買った後に運転が難しかったり、全く運転できなくなったりすると思います。

自分が知識を持ってしっかりしていないと、自分に合った車と言うのは難しいですね。僕の乗っている車を買うときに、もし他人に任せていたら、絶対に自分の体に合った車は出来なかったし、自分の動きで何処がどう動かせればいいのか分かっていなかったら、今運転出来ていないと思います。


長屋さんはここで練習出来たから、何となくイメージは出来たけれど、なかなかそういう場所は少ないのです。販売店に行けば、そこの車を勧められてしまいます。中には「うちの車では合いません」と言う販売員がいるかもしれないけれど、基本的には売りたいからという思いが先にきてしまっているのが現実だと思います。
運転装置の方ではこれがあればいいのにという物はありますか?

主装置には、ハンドル、ブレーキ、アクセルがありますが、アクセル操作で問題になったケースはありません。問題になってくるのは、ハンドルとブレーキです。ハンドルに関しては、両手で操作することを前提に操作力が設定されているので、片手でハンドル操作をする方や、操作力が弱い方は円滑に回せなくなります。自動車メーカーの中には、あらかじめパワーステアリングの操作力をさらに50%軽減させた車を販売しているところもありますが、全体としては選べる車種が少ないのが現状です。設定車種が増えれば選択肢が広がるので、今以上に障害内容にあった車種を選択できるようになります。
ブレーキに関しては1.5トンある車をいかにきちんと止めるかです。ブレーキ本体の操作力をさらに軽いものにするか、もしくは運転補助装置の改造で軽く出来るか、いずれにせよ、もっとブレーキを軽い力で操作できたらと思います。もっと簡単に止まれれば、もっと安全・快適に、元気良く走れると思います。
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僕がレースをしていて、安心だと感じるのは、やはりブレーキがしっかり利くということでした。

昔は車を改造して、ブレーキの操作力を軽くすることができましたが、今はPL法とコンピュータ制御の関係で、ほとんどいじれる部分がありません。ブレーキに関しては、もともと軽い力でも安全に停止することのできる車を増やしてもらうか、手動アクセル・ブレーキ装置の方でアシスト出来るような車がいいです。そして、ひとりで乗り降りの出来る車であれば、重度障害者でも乗れるようになって助かる人が増えると思います。まず、ここをクリアできるように自動車メーカーに働きかけていきたいと思います。

本当に貴重なお時間を頂き、ありがとうございました。インタビューさせて頂いた感想は、今後必ず車椅子のままでも運転出来る車が日本でも普及していくと思います。そこには安全性を視野に入れ、外に出やすい環境作りに繋がっていけば嬉しいです。車の進歩と人間の考え方が同時に進歩していってもらいたいです。
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