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パリって、どんなところ?

「パリの明かり編」に続く第三弾、今回は少し視野を広げて「パリ」という町の魅力をあらためて考察してみます。

〜古女房、亭主を採点〜

 過去 2 回にわたってフランスの一般家庭で目にした光景を書きました。今回はもうすこし視野を広げて「パリ」という町を眺めてみましょう。フランスはとても中央集権的な国。特色豊かな各地方もパリが「こうだ!」と言えば、従わざるを得ない。文化イコール商売、になってる町でもある。
 ま、難しい話は置いといて、なぜこの「花の都」が人々の心をとらえるのか、つれづれなるままに考えてみましょう、はい、カフェでコーヒーでも飲みながら・・・

記事ブロック_画像_写真ちょっと高い所に登れば、どこからでもエッフェル塔や凱旋門を見渡せる

ウチのダンナ「パリ」の魅力

 「高橋さん、フランスとイタリア、どっちがどう好きですか?」
 フランス語とイタリア語の両方が商売道具なので、よくこうきかれる。勉強したのはフランス語のほうが先で、中学生のころから自分で辞書をひきひき、単語の意味なんか調べてうきうきしたりしてた。大学でもフランス文学勉強して、イタリア語はそれよりかなり後になってから。でも最近は、通訳の依頼はイタリア語がフランス語を上回り、ガイジンの前に出るとついついイタリア語が口をついて出る。

 「そうですねえ、フランスはダンナみたいなもんで、どこがいいとか悪いとか、もはや批判能力ナシ。
  イタリアは最近できた愛人で、一緒にいるとそりゃあ新鮮で楽しい。でも長年連れ添ったダンナを
  捨ててまで、そっちと一緒になりたいか?って聞かれても、答えにこまるのよね・・・」
こう説明すると、優柔不断に二股かけてどんな仕事も引き受けちゃう貧乏性を理解してもらえるみたいだ。

 こういうわけなので、フランスやその首都パリについて、新鮮な見解を述べよ、と言われてもじつは困ってしまうのですが、あえて、う〜ん、やはりこういうところが、いいよなあ・・・と古女房、ウチのダンナをがんばって褒めてみようと思います。

 

記事ブロック_画像_写真ヨーロッパでは石造りの建物は一般的

縦長の効用

 パリの町がなぜ美しいのか。これは「よく見ると美しい」のではなくて「パッとみた感じが」美しい、ということだ。だってよく見ると、道は犬のフンだらけ、壁は落書きだらけだもんね。
 故・伊丹十三氏の名著「ヨーロッパ退屈日記」中に、パリの美しさについてのじつに的を得た記述がある。ご興味のある方はぜひお読みください。氏がおっしゃるに、パリは「縦の線」が整っている。まず街を見渡したとき、当然のごとく目に飛び込んでくるのは重量感のある石造りの建物、しかも、建蔽率なんてものがあるのかどうか知りませんが、すき間なくぴったり隣の建物にくっついて建てられている。そしてなぜかその建築の群れが醸し出すイメージが整然と美しい。どうしてだろう? それは縦の線の効用なのです。
 パリの一般建築はほとんど高さが一緒、頭が整っている。そして、窓。これが決定的要素。窓という窓、みんな「縦長」なのだ。例えば東京。ビルや家屋の窓の形は縦長か横長か? 一言では答えられない。いずれにしても「ワイドな長方形」で、枠の縦横の比が 1:2 ぐらいの、アルミサッシの二枚式、っていうのが一般的なのかな。高層建築となると、全面ガラス張りでどこまでが壁でどこからが窓なんだかわからないようなのもいっぱいあるし。屋根の高さもまちまちで、統一感のないこと甚だしい。でも、そこが東京のおもしろいところでもあるけれど。

 パリの窓はどうして縦長なのか。答え:建築が「石造り」だからです。材質が「重い」んですよ。パリは秋・冬はとにかく薄曇りの日が多くって、日照時間も非常に短い。太陽の光はまさに宝物。だからできるだけたくさん、しかも効率よく室内に取り入れたい。じゃあ、壁面にでっかい窓を作っちゃえばいいじゃないの、というのは木造建築が伝統の我々の発想。窓以外の部分や上層階の床が重量のある石材だとすると、あまり大きな枠取りで壁をぶち抜いてしまったら、建物自体がその重さに耐えられなくなってしまう。そこで苦肉の策が、面積の小さい窓をたくさん作る、なのだ。しかもその場合、同じ力学上の理由で「横長」よりは「縦長」のほうが賢いでしょう、という結果になる。

 人間だって、チビでデブが列を乱して立ったり座ったりしているより、すらりと背が高いオネエサンたちが整然と並んでいるほうが美しいにきまっているでしょう、と氏はのたまう。しごくごもっとも。都会の趣としてどっちが上、ってことは個人の判断にまかせるとして、まあ、東京が遊園地の乗り物の順番待ちしてる家族連れの列みたいだとすれば、パリはさしずめファッションモデルのオーディション会場、ってとこでしょうかね。で、この「おびただしい数の縦線の効果」あって、あの実に均整のとれた外観の第一印象が決定する、というわけです。

 

記事ブロック_画像_写真花の都の街角ではよく見かける光景

パリ風レイアウト

 そして、これは私自身がパリで生活して発見したことなのですが、何につけても「統一感」と、その「高密度なインパクト」を醸し出すコツというのは「狭い空間に、おなじ面積もしくは体積のものをキチンと並べてしかもギュウギュウにつめこむ」ことだと悟りました。これは、空間利用の手段として「便利か不便か」と考えると、不便なことこの上ないのですが、視覚的な効果は絶大です。

 わかりやすいところでパリのカフェ。実際に行ったことのない人でも、ガイドブックの写真などでご覧になったことはあると思いますが、なんであんなにテーブルとテーブルの間が狭いんだよ!と感じたことはないでしょうか。立ったり座ったりするたびに隣の人に「すみません」って声かけなくちゃならないし、レストランもしかりで、所狭しと並んだ小さなテーブルを、ギャルソンがいちいち動かして引っ張り出してくれないと、奥のイスに辿り着けない。でもそのおかげで、一歩離れてその場を見てみると、なんともゴチャゴチャキッチリ楽しそうというか、密度が濃いというか、あ〜、パリだよな〜、という光景になるのです。

 

記事ブロック_画像_写真ガラス張りのビルでも窓は縦長

ダンナに学ぶ究極の超整理術

 バーカウンターの天井網につり下げられているワイングラスなんか、あんなにくっつけて並べたらガチャガチャぶつかって割れるじゃんか、とこっちが心配になるようなことを、彼らは平気でやる。女性用の小間物屋さんで、膨大な数量の靴下なんかが、とにかく戸棚にギュウギュウに押し込まれて売られたりしてるのもよく見る光景。
 色とりどり、見ていてほんとに楽しいのですが、「よっしゃ、じゃあ私も!」と安直に真似をするなかれ。このエステティックな日常のテクニックを盗むには、それなりの忍耐が必要。間違っても「使い勝手を優先して、ちょっと広めな空間で」と妥協しないこと。それをやったとたんに、なんだかスカスカした印象に戻ってしまう。「ああ、不便!」とグチをこぼす感じが、ベストバランス。そして、その空間を満たす物が家具であれ、日用雑貨であれ、衣類であれ、いつもいつも、使い終ったらキッチリと元の通りに戻しておかないと意味がないのである。

 見るものをうならせる圧倒的な数量。狭い空間のなか、整った線の上に並んで詰め込まれる品々。パリっぽさ、とは、案外、こんな単純なことのような気がいたします。ウチのダンナのセンスと几帳面さにあらためて惚れ直し、ちょっとは見習おうと自室の整理整頓などしてみるものの、こちらは所詮日本人なので、あれよあれよという間に統一感などまるでないおもちゃ箱のような部屋に戻ってしまうのでした。

 

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