 |  |  | | | ゴルフ GTX に乗ってプレミアムについて考える | | Volkswagen Golf GTX |  | 200 馬力を搾り出す T-FSI エンジン、新世代トランスミッション、DSG を搭載したゴルフシリーズの最上級モデルが上陸した。その実力の程を輸入車の販売経験を持つ筆者が「セールスマンの視点」を織り交ぜながらチェックしてみた。
|  | 文 :大場順二(Vividcar.com) 写真:柴田康年
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|  |  |  |  |  |  | 大場 順二 [VividCar元編集員] |  |  |  | | 自動車業界歴が無駄に長い私ですが、日本の自動車販売に潜む様々な問題点を浮き彫りにしたい、という野望を持っています。 |  |
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 |  |  |  |  | ガスディスチャージヘッドランプを標準装備するが、この角度ではGTとの相違点はほとんど分からない。
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 |  | デュアルエキゾーストパイプが、控えめに「スポーティモデル」であることを主張している。
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|  |  |  | 「さりげなさ」が隠し味
ゴルフのラインナップに新たに GTX が加わった。GTX はインタークーラー付ターボ 200ps の TFSI エンジンに DSG(ダイレクトシフトギアボックス)を搭載し、ナビゲーションシステムをも標準装備する日本専用モデルだ。
では、この日本専用モデルの立ち位置を確認してみる。現行ゴルフのグレード構成は価格順に、エントリーモデルの 1.6E 、2.0GLI 、2.0GT 、同 Leather Package である。そして、このラインナップは大きく 3 つのラインに分類される。まず、 E と GLI が「ベーシック」のライン、 GT が「スポーツ&プレミアム」のライン、そして夏前に導入が予定されている GTI が「リアルスポーツ」のラインを受け持つ。
今回登場の GTX は「スポーツ&プレミアム」の最上級モデルという位置づけだ。このラインが日本専用モデルとして強化されたということは、インポーターのフォルクスワーゲン グループ ジャパンとしてもこのマーケットが有望である、と睨んでいる証拠だ。聞くところによると、日本における欧州コンパクトクラスの販売は、 徐々にではあるが 300 万超えのグレードにシフトしている傾向にあるらしい。 BMW 1 シリーズ、アウディ A3 スポーツバック、アルファ 147 などが「プレミアムコンパクト」という名を掲げて続々と市場に投入されている事実がこれを裏付けている。
さて、これら先行するライバル達に GTX はどのような武器で立ち向かうのか?まず外観をチェックしてみよう。画像で見てもお分かりのように外観からは「スポーツ」であるとか「プレミアム」などということはあまり感じられない。「他のグレードと差別化された特別な装備」も少なく、「リアの GTX バッジ」「 17 インチのアルミホイール」「デュアルエグゾーストパイプ」程度だ。これらは停車中の車をじっくり眺めれば分かるというレベルの差異で、街中で走っている GTX を判別できる人は、関係者を除けば少数だろう。少なくとも「外観から匂い立つようなプレミアム感は皆無」である。
私がセールスマンであれば「とにかくお乗りになれば全てお分かりいただけるクルマです」という言葉を、まずお客様に伝える。「プレミアムコンパクト」ととしての高いポテンシャルを秘めながら、それらを自ら声高に主張しない、という「さりげなさ」「奥ゆかしさ」がこのクルマの大きな特徴だと思うからである。
では、その「秘められた、高いポテンシャル」について見ていくことにしよう。
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 |  |  |  | ■ GTX の主な装備をチェック。 【左上】ガスディスチャージヘッドランプ【右上】17インチアルミホイールが標準装備。 【左下】DSG(ダイレクトシフトギアボックス)。【右下】T-FSIエンジンは 200ps / 5100-6000rpm 28.6kg-m / 1800-5000rpm のスペックを持つ。 |  |
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 |  |  |  |  | 本革シートとウッドステアリングは標準装備。内装色はアンスラサイトと呼ばれるダークグレー系の落ち着いたカラー(写真)と華やかなベージュが用意される。
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 |  | 最上級グレードらしく、DVDナビゲーションシステムを標準装備
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|  |  | 上質感漂う上品なインテリア
おとなしい外観を「少し物足りない」という印象で眺めていた人も、運転席に座ってみればだいぶ溜飲を下げることだろう。本革張りのたっぷりとしたサイズのシート、インパネを走るウッドパネル、標準装備されるナビゲーションシステムなどに「最上級モデルに乗っている」ということを実感させられるはずだ。お客様の所有感をくすぐる室内の演出はうまい。各部の仕上がりも満足の行くレベルだ。
高級車の定番である「レザーとウッド」は、ともすれば「お父さん使用」に陥ってしまうクルマが多いが、GTX のインテリアはいやみを感じない、好感の持てる仕上がりになっている。「豪華」というよりも「上質」を目指している印象を受ける。インテリアカラーは「ベージュ」と「アンスラサイト(ダークグレー)」の2色が用意されている。このクルマの性格を考えると、控えめな印象のあるアンスラサイトが、個人的にはお奨めだ。
非常に好感の持てるインテリアではあるが、「スポーティ」というコンセプトからみると、ウッドのステアリングは意見の分かれるところであろう。確かに落ち着いた印象を演出するのに一役買っているが、実際に運転すると手にしっくりとなじんでくれない。私のごとき下手なドライバーならいざ知らず、少しでもウデに覚えのあるドライバーは常に手が触れる部分だけに気になる部分だろう。
もうひとつ、これは他のグレード・今までのゴルフにも言えることであるが、メーターパネルのブルーのイルミネーションには違和感を覚える。慣れの問題かもしれないが、夕闇が迫るたびに気になったことを付け加えておく。
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 |  |  |  | T-FSIエンジンとDSGの組み合わせはパワフルそのもの。
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|  |  |  | エンジンをかけると豹変
プレミアムという言葉を辞書で引いてみると「割り増しの」「額面以上」のという意味が確認できる。意訳すれば「通常のモデルに対し、新たな価値が付加されること」と言えるだろう。
GTX に新たに付加された価値は、イグニッションを ON しただけで、その一端を感じることができる。低く力強い排気音は、このクルマが「普通のゴルフではないこと」を実感させる。この音を聞かせて「どうですいい音でしょう」というのはセールスマンとしては避けたい。この音自体が雄弁なセールストークに他ならないからだ。
走り出すとすぐに理解できるのは DSG の実力である。アクセルを軽く踏み込んでいくと、速度こそ違え、 F1 の車載カメラの映像のように、瞬時にシフトアップしていく感覚を体験できる。一般的な AT はどんなに優秀でも、どうしてもシフトチェンジの時に「間」ができるが、 DSG にはこの「間」が存在しない、と言ってもいいほどのダイレクト感がある。この DSG は「ノーマル」「スポーツ」「マニュアル」 の 3 つのモードを選択できるが、どのモードでもそのダイレクト感は変わることが無い。シフトアップの感覚が楽しいので、ついついアクセルを踏み込んでしまったほどだ。まさに、AT の便利さと MT のスポーティさのいいとこ取りができる、新世代のトランスミッションといえるだろう。
その新世代トランスミッションが伝えるべきパワーを搾り出す「 T-FSI エンジン」も秀逸だった。特筆すべきは、最大トルクを発生する回転域で、1800 回転というアイドリング+アルファから、5000 回転までの広い領域で 28.6kg-m という数値を叩き出す。この恩恵により、なんとなくアクセルに足を置いているだけで、街中の流れをリードすることができるのだ。こういうことをいうとドイツ車ファンの皆さまに怒られそうだが、「エンジンを回さずにトルクに乗っかる」という、アメ車風のドライブが可能である。エンジンを余計に回さなくて済むし、ノーマルモードであれば、すばやく 6 速までシフトアップされるので、静粛性や燃費にもいい影響があるはずだ(事実、街中で 3,000rpm 以上はほとんど使わないし、今回拝借したクルマは 10km/L を超える燃費を計上した)。
一方、乗り心地や安定性はどうか?結論から言えば「スポーティ&プレミアム」の名に恥じない仕上がりになっている。試乗した日はあいにくの雨模様であったが、雨の高速道路で少々無理なレーンチェンジをしても全く危険は感じなかった。法定速度内であれば、とても平和な時間を過ごすことが出来るだろう。
ただ「プレミアム」という言葉に「ラグジュアリー」的な思いを寄せる人には、少々固すぎる乗り心地かもしれない。高速道路の目地を乗り越えたショックはダイレクトに感じるし、ピッチもストレートに伝わってくる。しばらく運転すると少し慣れるとは言え、助手席や後席からは不満の声が出るかもしれない。私がセールスマンであれば、この点はしっかりと説明し、体験もして頂き、お客様に「じっくりと悩んで頂く」ように仕向ける。この部分はセールストークだけでは賄いきれないと思うからだ。もちろん「悩むに値する」魅力的なクルマである、ということを強調することは言うまでも無い。
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 |  | GTX そのキラーセールストークとは?
最後に GTX を総括してみよう。普通に「非常に良くできたクルマです」と、総括するのも芸が無いので、ここではセールスマンが、悩んでいるお客様の背中を押す、「まとめトーク」「キラーセールストーク」を考えながら総括を試みてみよう。
GTX に関して、合理的な「まとめトーク」はすぐに思いつく。 GT−Leather パッケージとの価格差を説明すればよい。件のグレードにナビゲーションシステムとガスディスチャージヘッドランプを装着すれば、 GTX との価格差は 10 万を切る。 367 万 5 千円という絶対価格は少し棚に上げて「 約 10 万円でターボ付のパワフルなエンジンと DSG が手に入ります。パワーと DSG は試乗で実感頂けましたよね?」というように、10万円という差額と「T-FSI エンジン& DSG」の魅力を比較していただくのだ。
そしてもうひとつ、日本人の国民性をくすぐるトークも考えられる。古来、日本人の美徳は「奥ゆかしさ」であると言われてきたが、高いポテンシャルを秘めながら、それをひけらかさない GTX は、そんな日本人の DNA に訴えかけるには、おあつらえ向きのクルマだ。よくいう「能ある鷹は。。。」というあれである。例えば、「 GTX は“速くて”“装備も豪華”なんですが、それ以上に“さりげない”という所がいい所なんですよね」などと、そっとささやいてみる。GTX の魅力を伝えるのに非常に有効なトークだと思うのだが、いかがだろうか?
しかし、最近の日本人はアメリカナイズされ「自己主張」を覚えた。このようなトークが効かない場合も十分考えられる。そんな時はどうするか?答えは簡単。にっこりと微笑み「それでは GTI が出るまで、もうしばらくお待ち下さい。きっとご満足いただけますよ」と言えばよいのである。
絶妙のラインナップが完成するまで、あと少しである。
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