 |  |  | | | The VS ! 【クライスラー 300C & マセラティ グランスポーツ 編】 | | ライトヘヴィ級デートカーで探る、米欧の恋愛観の違い ? |  | 今回はスポーツカーブランド対プレミアムブランド、真正面からの対決です。価格差もありパワー差もあるけれど、クルマとしてみたらどちらが勝利するのでしょうかね。クルマはパワーがある方が勝ち ! というわけでは有りませんからね。
|  | 文 =まつばらあつし 写真=まつばらあつし 柴田康年(VividCar.com)
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|  |  |  |  |  |  | まつばらあつし [vividcar エグゼクティブディレクター] |  |  |  | VividCamera も少しづつコンテンツが増えてゆくのでお楽しみに。 また、クルマ関係の記事や、バイクとかいろんなものにも焦点を当てて行きたいと思うので、そちらの方もどうぞご期待を。人間としてはオートフォーカスじゃなくて、決めたものにフォーカスを合わせるマニュアルなタイプかも。 |  |
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 |  |  |  |  | どーん ! と押し出しの強い、存在感たっぷり、アメリカその物のフォルム。
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|  |  |  | CHRYSLER 300C 5.7 HEMI
2004 年の北米カー・オブ・ザ。イヤーに輝き、クライスラー久々の大ヒット作となった 300C は、正直日本ではパッとしないものの、本国では確実に台数を増やしているクライスラーのフラッグシップであり稼ぎ頭とも言うべき存在である。今回試乗できた最新モデルは、右ハンドルの採用やアルパイン製のインダッシュカーナビ、電動格納サイドミラーなど、日本向けにキッチリ仕立て上げて、300C を日本で本気に売ろうというクライスラーの意気込みを感じさせる。
基本的なシャシーをメルセデス・ベンツ E クラス(ただし旧型)と共有し、 5.7 リッター V8 の「HEMI」と称される 8-4 気筒可変シリンダーシステムのエンジンは、パワフルさと燃費向上に大きく貢献。スタイリングもクラシカルな印象を持ちつつも、モダンな所もみせるといった、PT クルーザーやクロスファイア同様、最近のクライスラートレンドに沿った仕上がりだ。
印象的なウエストラインの極端な高さと、笑っちゃうほど小さめなウィンドウガラスのバランスというか、アンバランスさに、古きよき時代の「アメ車」を思い起こさせるデザインは、日本で言えば「団塊の世代」をターゲットとした FR セダンと言えるかもしれない。
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 |  |  |  |  | 明るい色だと軽快に見えるが、サイズそのものはチョイ大きめ。マセラティらしい顔つき。
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|  |  | MASERATI GRANSPORT
マセラティ・グランスポーツも「古きよき時代」を彷彿とさせる、特徴的なスタイリングだ。個々を構成するパーツや細かい部分は明らかに 21 世紀のモダンなモノでありながら、全体のフォルムはどことなく古典的な印象を醸し出している。そもそもグランスポーツの名前からして、1950 年代のクーペに付けられていた歴史のある名前なのだ。ただ、新しい時代のグランスポーツは、「マセラティ・トロフェオ」というワンメイクレースで使われていたモデルをベースとしている。すなわちコイツは由緒正しいホンキのスポーツカーなのである。
ホンキだからしたがって 4.2 リッター V8 で 401ps というかなりのハイチューンエンジンを搭載し、「カンピオコルサ」と呼ばれるパドルシフトで街中や高速道を走り回れば、レーサー気分を少しだけ味わえる。もちろんワインディングやサーキットに持ち込めば本気のスポーツカーとしてのパフォーマンスもみせてくれるはずだ。
だからと言って、年中歯を食いしばって走り回るだけの熱血坊やではなく、オトナの風情を持って、実用的なクルマとしての利用も可能だ。見掛けによらずグランスポーツは後ろにもシートを持つ 4 シーターなのだから。
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 |  |  |  | どちらも大きめなテールランプが特徴。ハイデッキ気味の 300C に対して、腰を低く落としたようなグランスポーツはリアスタイルまで挑発的。
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|  | ファーストインプレッション対決
どちらも V8 エンジンの心臓を、ちょっとワルそうな感じの古きよき 50 年代のオマージュとも言えるライトヘヴィ級のデカイ図体に積んでいる。そのファーストインプレッションだが、 300C はそのビジュアルから、もしかしたらリアシートのパッセンジャーのためのショーファードリブン ? と思ったら大違い。パワフルでトルクフルなエンジンに、思ったよりシャープなハンドリングとしっかりしたボディ。運転してみてよく解る、正真正銘のドライバーズカーなのであった。 試しにリアシートに腰掛けてみると、フロントのシートに比べて明らかに待遇が悪い。狭くは無いけど落ち着かないシートは、ブレーキングの度に滑るし、景色も狭いウィンドウから覗くような感じになってしまう。まあ、大きな車体のおかげで窮屈な思いはしないで済むけれど、冷静にみれば明らかにドライバーと助手席メイン。全体的な印象は極めてクール。シートに腰掛けてハンドルを握っても、これから事務所で仕事しますって感じになってしまう。うーん、こういうのがイイっていう人は確実にいそうだ。 一方のグランスポーツは、どこからどうみてもドライバーのためのクルマだ。とりあえずの 4 シーターではあるけれど、リアシートは荷物置き場かペットの指定席と割り切って、ドライバーズシートに潜り込むと、とにかく走ろうさあ走ろうと、クルマが催促しているような感じがしてくる。最初ッからやる気マンマンなのである。言い方悪いが欲望ムキ出し。 クールな 300C にホットなグランスポーツ。運転が好きな「男の子」は迷わずグランスポーツを選ぶのである。
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 |  |  |  |  | | グリル以外はクリーンでスクエナなスタイルの 300C。役員室の豪華だけれども実用的なデスクみたい。 |  |
|  |  | アピアランス対決
先にも書いたように、どちらも 50 年代オマージュともいえるクラシカルな印象と、21 世紀らしいモダーンな印象をバランスさせたアピアランスで、いわゆる「(北米や欧州での)団塊の世代」のココロを鷲掴み ! という辺りを狙ったのではないかと推測されるが、なにしろどちらも「デカイ」ので迫力は十分。 300C のサイズと重さは 5020×1890×1490 mm、1860kg、ホイールベースが 3050mm。一方のグランスポーツは 4510×1825×1295 mm、1680 kg、ホイールベースが 2660mm というスペック。 上記の数値で感じる以上に、300C の押しの強さは圧倒的。特にサイドから観たときのグラスエリアの小ささから来る「カタマリ感」は、唯一無二の存在、正当な「アメ車」の伝統を受け継いでいるという感じがする。今は優秀なサラリーマンが、昔は「ワル」だったけどな・・・、的な、感じと言えばいいのか。
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 |  |  |  | | ヤル気まんまんのグランスポーツ。どの角度から観ても有機的で生き物のよう。 |  |
|  |  |  | 一方のグランスポーツは有機的なフォルムが印象的。数値的な大きさを感じさせず、低く構えて獲物を狙うヨーロピアンスポーツカーの正しい血筋を思い起こさせてくれる。というか、こちらはたぶん、今でも「ワル」。ハッキリ言えば気分は「スーパーカー」なのだ。 いやはや、やっぱりこういうのに「男の子」はヨワい。アピアランスに関しても、ロコツにワルっぽいグランスポーツが一歩リード。いやあ、このカタチ、萌えはしないが確実に「燃え」ます。
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 |  |  |  | インテリアは対照的。直線基調の 300C(右)に、曲線主体のグランスポーツ(左)。300C のステアリングの巨大さはジャイアント馬場仕様 ?
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|  | インテリア対決
300C のインテリアは実にクリーンで機能的。というか、「超ビジネスライク」。素っ気無いと言えるほどのシンプルさで、コックピットというよりも、オフィスの事務机っぽい印象さえ感じさせる。まあ、コックピットも事務机も「仕事場」という面においては一致しているから、間違いじゃないんだろうけれど、まるでシャキッと定規を当てて書いたような直線とモノクロ映画のような色の組み合わせは徹底的にクール。シートのサイズも大柄で、周りの空間も余裕たっぷり。居心地は悪くは無いけれど、余裕あり過ぎて、小柄な日本人としてみれば何となく落ち着かない感じもしないではない。正直言えば感情移入のしにくいインテリアではある。 グランスポーツの方はと言えば、逆に徹底して有機的。眼に入る殆どのラインは曲線で、柔らかそうな素材で包まれている。キュッとタイトなシートに包まれると、なにか獣の体内にいるような、血の通った印象が強い。ハイテク機器がギッチリ詰まってはいるものの、どことなく懐かしさを感じさせるメーター類や補機の配置は、古きよき時代のスポーツカーをイメージ。しかし現代のクルマらしく、各部の操作性は非常に機能的で使いやすい。唯一の違和感はあるべきところに存在しないシフトレバーくらいか。グランスポーツのトランスミッション「カンピオコルサ」はパドルシフトだけで操作するのであった。
感情を押し殺したような、クールな 300C と、感情ムキだしなグランスポーツ。好みはハッキリと分かれそうだが、ここはやはりグランスポーツの人間くささ、というか、ケモノくさいところに一票、かな。
ちなみに車内の時計は、奇しくもレトロ調のアナログ時計。表現のスタイルは違っても、狙っている方向は 300C もグランスポーツもおおむね同じなのかもしれない。
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 |  |  |  | | デカイ車体にデカイエンジン。カバーで覆われている 5.7 リッター V8 の「HEMI」エンジン(右)に対し、グランスポーツのエンジン(左)はむしろ古典的なデザイン。 |  |
 |  | 思わず背筋が伸びる 300C のドライビングポジション(右)。グラスエリアは狭いけれど視野は決して狭くない。グランスポーツ(左)は古典的にアイレベルが低い。足も伸ばしぎみで、気分は休日デート中のレーシングドライバー(笑)
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|  | エンジン対決
エクステリアやインテリア同様、300C のエンジンルームはこれまた超ビジネスライクで清潔そうな仕上がり。5.7 リッター「HEMI」V8 エンジンは最高出力 250kw(340ps)に最大トルク 525 Nm(53.5kgm)を発生させ、走行状態や掛かる負荷の状況によって 8 気筒中 4 気筒を休止させる可変シリンダーシステムにより、最大 20% の燃費向上を実現している。実際に走ってみても、この可変シリンダーシステムは、できるだけドライバーにその存在を関知させないセッティングがされているのか、いつ 4 気筒が休んだのか、8 気筒に戻ったのか、正直よく解らないが、この手のデバイスは匿名性が高ければ高いほど優秀なモノだと思うので、これは正解。どんな状況でも過不足の無いトルク&パワーのおかげで運転は安楽。アメ車っぽいどかーん ! という爆発力は無いけれども、走っていればいつの間にか速いというタイプ。クルマの性格に適したエンジンだろう。 一方のグランスポーツは、こちらもインテリア同様有機的なイメージを持った、まさに「心臓」的な造形をもつ 4.2 リッター V8。最高出力 295kw(401hp)に最大トルクは 452 Nm(46kgm)という、先にも書いたようにかなりのハイチューンエンジン。アイドリングの時でさえ室内にソノ気にさせてくれるエクゾーストノートと僅かな振動が入ってきて、走り出す前からなかなかの雰囲気。もちろんアクセルを踏み込めば、スコーンと抜けるようなサウンドとともにあっという間に非日常の世界へ連れていってくれる。もう、こう男の子の心をくすぐるんですねこれは。ロコツにエンジン頑張ってます ! と言う感じで。そしてトルクフルなエンジンのおかげか、街中の低速走行も苦としない。見掛けによらずフレキシブルなのにはちょっとビックリ。 というわけで、しつけの良い大人しい(でも速い)エンジンよりも、やっぱ乱暴でウルサイ(もちろん速い)エンジンの方にココロはぐっと掴まれる。エンジンの部でもグランスポーツの圧勝。
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 |  |  |  | 昔のアメ車っぽい怒濤のトルク感は無いものの、走り始めれば見掛け以上に俊敏なドライバーズカー。この辺メルセデスの血が混ざっている感あり。それにしてもグラスエリアが狭いなあ。
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|  | フォーマル、ビジネス、デートもこなせる 300C
さて、あらためて 300C を運転しつつ考えてみる。このクルマは誰が、どんな目的で買うのだろうか。確かにアメリカではベストセラーである。それは解る。アメリカなら、このクルマはかなり便利に使えるはずだ。サイズも手ごろだしパワフルだしスタイルだって決してカッコ悪くは無いし、取り立てて言うべき欠点が見つからない。でも、日本で乗るとなったら ? 「中小企業の社長のムスコ(30 代未婚)が会社名義で買う !」 「仕事でも使えるし、時々ならお客さんを乗せて空港への送り迎えやゴルフにも出かけられる。週末はデートでお出かけ・・・」 おお、よく考えたら日本でもマルチパーパス ?
高速道を走る。300C は静かに、路面のうねりをゆっくりとトレースしている。低速域でも、高速域でもとてもラクチン。先に「超ビジネスライク」と書いたインテリアも、こういうシチュエーションではむしろリラックスできる。すなわち感情移入できない分だけ気が楽なのだ。「運転」という作業は日常のルーティーンワークの 1 つであってトクベツなものではない。「運転」という作業はむしろ事務的にこなして、ドライバーは他のことを考える余裕さえ得ることができる。今日はどこへ行こうか、夕食はどの店を選ぼうか、遅くなったらどこかホテルでも予約しておくべきか、等々。ドライバーズカーでありながら、運転そのものが目的ではなく手段となっている。これだけ押しの強いデザインと大排気量エンジンを持っていながら、主張し過ぎない。仕事もデートもさりげなく。日常の何でもない動作が醸し出す色気ともいうべきか。このキャラクターは他では味わうことができない 300C ならではの持ち味だ。
近々公開される映画「ファイヤーウォール」において、主演のハリソン・フォードが演じる、シアトルの銀行に勤めるコンピュータ・セキュリティの専門家ジャック・スタンフィールドの愛車として 300C が使われるとのこと。そう考えると、この 300C のキャラクターは、21 世紀のアメリカの人々が想像する、理想的なアメリカ人そのものの姿と言えるのかもしれない。
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