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tab_star2001/09/08tab_endイタリアの官能美
ラ・パヴォーニのエスプレッソマシン
ラ・パヴォーニのエスプレッソマシン
日進月歩の家電の領域で、驚異のロングセラーを誇るエスプレッソマシン界の革命児、ユーロピコラ
選択、文章:山口 淳
撮影   :四宮義博
協力   :Dr. Goods

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山口 淳_プロフィール_写真Sicon_home山口 淳
[ライター]
北欧のミッドセンチュリーの頃の椅子やプロダクトに魅せられて、かれこれ 10 年になる。縁あって、雑誌『太陽』の北欧デザイン紀行特集(2000 年 12 月号)の手伝いをしたことがきっかけで、2001 年には池袋コミュニティカレッジの「北欧インテリア入門」という講座の講師を引き受けるという貴重な体験もさせていただいた。正直、後者については、慣れないおしゃべりに加え、体系的に勉強したわけではないので馬脚をさらすのではないかと冷や汗ものだったが、この度、その特集と講座がベースとなった書籍『太陽レクチャーブック 003 北欧インテリア・デザイン』(平凡社)という本が刊行された。主要執筆者は、僕を除けば、島崎信さん、柏木博さん、織田憲嗣さんといった北欧やデザインの優れた識者、論客ばかりで、北欧デザインに興味のある人にとっての格好な入門書に仕上がっている。ご高覧いただければ、幸いである。
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エスプレッソをドッピオで
エスプレッソは、我が家の歳時記

 今年も 9 月末まで続くと思われた残暑だが、いきなり気象庁も手のひら返し。朝夕は半袖では涼しすぎるくらいの天気が続いている。このまま秋に突入してしまうのだろうか。
 我が家の秋は、夏の間、埃をかぶっていたラ・パヴォーニの始動で、幕を開ける。毎日のように飲んでいたアイスコーヒーやアイスオーレが、エスプレッソとカプチーノに変わると「やっと秋が来たなあ」と実感するわけだ。色気より食い気。「秋来ぬと風の音にぞ驚かされぬる」ことはないが、ラ・パヴォーニのボイラー音やプシューという抽出音を聞くと「秋来ぬ」と、しみじみと感じ入る次第である。
 7 年前のイタリア旅行の際に、ローマの免税店で購入した我が家のラ・パヴォーニは、「プロフェッショナル」。旧式のレバータイプで、プレッシャーゲージがついたエスプレッソマシンだ。最近は、もっとお手軽にエスプレッソを楽しめる最新型マシンが、ラ・パヴォーニからも他のメーカからも発売されている。でも、そのデザインの美しさ、オリジナル性、そして、操作性の楽しさにおいて、このエスプレッソマシンに優るものはないと僕はこのマシンに惚れ込んでいる。

 ラ・パヴォーニは、エスプレッソの王国・イタリアで最も歴史ある、由緒正しきメーカーのひとつだ。イタリアのカフェやバールで当たり前のように置かれている、お馴染みの業務用のエスプレッソマシン。あれを世界で初めて完成させたのが、このラ・パヴォーニである。現在のエスプレッソマシンの原型となったマシンは、正確には 1901 年にルイジ・ベッツァラが発明し、特許を得たものだが、それをバール用の実用的な業務用マシンとして完成させ販売したのはデシデリオ・パヴォーニという男で、このデシデリオが、ラ・パヴォーニを旗揚げした人物である。
 ラ・パヴォーニがエスプレッソマシンの歴史にその名を刻む逸話は、他にもいろいろある。たとえば、アメリカのマシンエイジのプロダクトを彷彿とさせるバール用エスプレッソマシンの傑作「 45 ラコスタ」。これは、イタリアの風と呼ばれる天才建築家で、あの世界一軽い椅子「スーパーレジェーラ」をデザインしたジオ・ポンティが、ラ・パヴォーニのために手がけたものだ。ブルーノ・ムナーリやエンゾ・マリが関わったポスト・モダンなデザインの「コンコラルソ」もラ・パヴォーニの代表作である。そう、ラ・パヴォーニは自社のプロダクトデザインに著名な建築家やデザイナーたちをいち早く起用した点でも、この分野のパイオニア的存在なのである。

 しかし、ラ・パヴォーニを語るうえで最も重要で、今なおロングセラーとして生産が続いている名品ということになると、やはり「ユーロピコラ」にトドメをさすといわざるを得ない。1960 年代初めに発売された「ユーロピコラ」は、もともとミラノのある芸術家が考案したレバー式のエスプレッソマシンを改良して、市販化したものだが、蒸気を利用した家庭用電気式エスプレッソマシンとしては、これが世界初の市販モデルだった。つまり、我々が自宅で現在利用している、さまざまなエスプレッソマシンのルーツも、この「ユーロピコラ」ということになる。
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プレッシャーゲージの付いたプロフェッショナル
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シンプルなユーロピコラ
急行ではなく、鈍行でいこう!

 1973 年に公開されたロジャー・ムーア主演の映画「007 /死ぬのは奴らだ」では、この「ユーロピコラ」は、ちょっとした小道具としても登場している。イタリア人の人妻との浮気を楽しんでいたボンドの自宅に火急の用で訪れた MI6 の長官に、コーヒーを御馳走する冒頭の場面がそうだが、ワードローブの中に隠れたイタリア女を暗喩するように「ユーロピコラ」をさり気なくカメオ出演させるセンスは、往時のエンターテイメントの王道 007 映画ならではの粋な演出だった(なお、僕は未見なのだが、最近ではマイケル・ダグラス主演の「ダイヤル M」やマット・ディモン主演の「リプリー」でも「ユーロピコラ」はカメオ出演を果たしているようだ。絵になるエスプレッソマシンの面目躍如といったところだが、果たして、単に小道具としてなのか、 007 映画のようにヒネリの効いた使われ方をしているのか少々気になるところでもある)。
 この「ユーロピコラ」とよく似た「プロフェッショナル」は、 1974 年にその「ユーロピコラ」の上級モデルとして発表されたものだ。モデルチェンジが宿命ともいえる家電製品の世界で、未だ、ほとんど誕生当時そのままの姿でロングセラーを続けている「ユーロピコラ」と「プロフェッショナル」は、20 世紀プロダクト史のなかでもいってみれば、例外中の例外といえるケースでもある。
 こう説明していくと、これまでなんとなく、このエスプレッソマシンが気になっていたという方も、改めて、このエスプレッソマシンのオリジナル性と完成度の高さに、驚き、感心させられるのではないだろうか・・・。

 さて、先に紹介した映画「007 /死ぬのは奴らだ」の劇中、ボンドは数十秒で素早くエスプレッソを入れてしまうが、実際にはあんなにスピーディにこのマシンでエスプレッソを入れることはできない。あれは、映画上の嘘である。実際には、最低でも 5 分くらいは見ておく必要がある。
 ラ・パヴォーニでエスプレッソを入れる手順(我が家のプロフェッショナルの場合)をご紹介すると、こうだ。
 まず、水をボイラータンクに入れ、レバーを完全に下までおりす。次にバルブを締め、水を温めている間にコーヒーパウダーをセットする。水が熱湯に変わったところで(これは、プレッシャーゲージを見て確認することになっているが、慣れてくればボイラーから洩れてくる沸騰音を聞けば、もう頃合だというのは自然に分かる)、今度はレバーを上いっぱいに引き上げる。そうすると蒸気と熱湯でパウダーが浸潤し、抽出先からコーヒーが数滴垂れてきてエスプレッソのいい香りが漂ってくる。それを確認したら、今度は腕の重さをあずけるようにゆっくりレバーを下げてゆく。それに合わせるように抽出口から香ばしいエスプレッソが抽出され、やっとドッピオ(ダブル)分が一杯分だけカップを満たしてくれる。ちなみに僕と妻ふたりで、ドッピオを一緒に飲む時には、さらに同じ作業を繰り返さねばならない。
 この一種の儀式めいた行為を面倒と思うか、愉しいと思うかは、おそらく個人差がかなりあるのではないかと思う。しかも、ラ・パヴォーニで安定した美味さのエスプレッソを入れるには、慣れるまで多少のコツとスキルも要求される。マニュアルの旧車の操作性や鈍行列車ならではの旅の愉しさを知る人なら問題はないが、なにがなんでもクルマはオートマ、旅は最速の急行でなければダメ、という人にはラ・パヴォーニは、単に厄介な時代遅れのエスプレッソマシンとしか思えないはずだ。
 つまりラ・パヴォーニは、そういう一連の儀式を楽しめる人。急行(エスプレッソの語源でもある)ではなく、鈍行の旅を心から楽しめる人。そういうアナログ的資質を持った男たちのためのマシンといえるかもしれない。

 ところで、余談の類に属するが、最後に、触れておきたいことがある。最近、雑誌でこの「ユーロピコラ」や「プロフェッショナル」が取りあげられている記事で、デザインをジオ・ポンティが手がけたというエピソードが、よく紹介されている件についてだ。なぜなら、僕が知る限り、そんな事実はないからである。あれは本当の話なのだろうか? アメリカ篇で取りあげたポラロイド SX - 70 も、一時、チャールズ・イームズがデザインを手がけたという間違った情報がメディアで頻繁に流されていたことがあったので、少々、気になっている。 事実が判明したら、ご報告したい。
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店内にはところ狭しとこだわりのグッズが並んでいる
より機能的な NEW ラインもあり。

 ラ・パヴォーニのエスプレッソマシンは、今回ご紹介した「ユーロピコラ」「プロフェッショナル」以外にも、レバー部分などにウッドを用いたクラシックタイプのものもあり、また、1990 年後半からはレトロフューチャーなデザインの最新式の INN ラインや ECL も発売されている(デザインはいずれもカルロ・グラッツィーニ)。個人的には、デザイン的にも操作性の楽しさからも、あまりピンとこないのだが最新式のエスプレッソマシンだけあって、旧式の「ユーロピコラ」や「プロフェッショナル」より、扱いがイージーで操作にコツやスキルも必要なく、安定した味のエスプレッソがより気軽に楽しめるというメリットがある。今回、輸入元の j - shops . com からの推薦で商品をお借りした「ドクターグッズ」のホームページには、今回取りあげた旧式タイプの他、そのニューラインも紹介されているので、興味のある方はぜひ右上にリンクしたホームページで、ご確認を。
EL(=ユーロピコラ)7 万 4000 円。PL(プロフェッショナル)9 万 9000 円

問い合わせ先: Dr. GOODS Tel : 03-3847-9002
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Dr.Goods
http://www.dr-goods.com...
サイトから通信販売可能です。
j-shops
http://www.j-shops.com/
ラ・パヴォーニの輸入元です。
パボーニ
ラ・パヴォーニ
http://www.lapavoni.com...
オフィシャルサイト(日本語なし)
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