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tab_star2001/05/24tab_end60年代のアメリカ
ケメックスのコーヒーメーカー
Masterpieces of The 20th Century
化学者シュラムボームが実験器具をヒントにリ・デザインした
コーヒーメーカーは、アメリカの有名美術館御墨付き
選択、文章:山口 淳
撮影   :四宮義博
協力   :BEAMS

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山口 淳_プロフィール_写真Sicon_home山口 淳
[ライター]
北欧のミッドセンチュリーの頃の椅子やプロダクトに魅せられて、かれこれ 10 年になる。縁あって、雑誌『太陽』の北欧デザイン紀行特集(2000 年 12 月号)の手伝いをしたことがきっかけで、2001 年には池袋コミュニティカレッジの「北欧インテリア入門」という講座の講師を引き受けるという貴重な体験もさせていただいた。正直、後者については、慣れないおしゃべりに加え、体系的に勉強したわけではないので馬脚をさらすのではないかと冷や汗ものだったが、この度、その特集と講座がベースとなった書籍『太陽レクチャーブック 003 北欧インテリア・デザイン』(平凡社)という本が刊行された。主要執筆者は、僕を除けば、島崎信さん、柏木博さん、織田憲嗣さんといった北欧やデザインの優れた識者、論客ばかりで、北欧デザインに興味のある人にとっての格好な入門書に仕上がっている。ご高覧いただければ、幸いである。
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半世紀以上生産が続けられているベストセラー
MoMA が認めたコーヒーメーカー

 日常的に一般家庭で使われる工業製品や日用品を、機能面と美的観点から、まるでアート作品のように展覧会で美術館が意欲的に取りあげるようになったのは、 1920 年代以降のことといわれている。量産品をグッドデザインという視点から評価することで、作り手と使い手双方を大いに刺激、啓蒙することになるこのイベントの熱心な推進者は、大衆消費時代に突入し、当時、我が世の春を謳歌しつつあった戦勝国アメリカであった。

 その中核を担っていたのは、ニューヨークのメトロポリタン美術館と MoMA (近代美術館)である。メトロポリタン美術館は、 1920 年代、 1930 年代を通じ頻繁に日用品の展覧会を開催。 1930 年代後期以降は、それは MoMA に受け継がれ、「役に立つ製品」「10 ドル以下の役に立つ製品」などと題された展覧会が次々と開催される。 1940 年代の MoMA のそのての展覧会のほとんどがクリスマス直前に開催されたことからも分かるように、多分にそれは商業的意図を含んだもので、実際、時には大手デパートとのタイアップで催されたが、一般庶民にとって、この日用品を対象としたグッドデザイン展は、機能・デザイン・価格のバランスのとれた優れたプロダクトを知るうえで格好の催しとして非常に歓迎されたようだ。

 1941 年に MoMA のパーマネントコレクション(永久展示品)に認定されたケメックスコーヒーメーカーが、「戦時下で役に立つ製品」と銘打たれた MoMA の展覧会で紹介されたのは、その翌年 1942 年のことである。

 ただ戦時下ということもあって、この展覧会でエントリーされた製品は、ガラス、陶器、紙、合板でできたものばかりで、鉄、クローム、錫、アルミニウム、銅、ニッケルといった軍隊や民間防衛にとって重要とされる素材が使用されたものはすべてエントリーから除外され、代替素材として重要視されていたベークライト、アクリルといった素材を使ったものも省かれた。その意味では、本来のグッドデザイン展の主旨に照らし合わせるとかなり片寄った内容ではあったが、この展覧会でも、ケメックスコーヒーメーカー、パイレックスの調理鍋、ラッセル・ライトがデザインしたスチューベンビィル製陶所アメリカンモダン シリーズなど、 20 世紀デザイン史に残る重要なプロダクトのいくつかが紹介されている。なかでも、誕生以来、半世紀を超えるロングセラーとして今なお生産が続き、世界中の多くの人々から支持されているケメックス コーヒーメーカーは、この展覧会で注目を浴び、ベストセラーになった代表的プロダクトである。
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ユニークなフォルムだが、各部はよく考えられている
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革ひもが巻かれている為、濡れた手でも滑りにくい
実験室での日常がヒントに

 ケメックス コーヒーメーカーを初めて目にした者は、まず漏斗と三角フラスコを合体させたような不思議なフォルムに目を奪われるだろう。くびれた部分にはウッドの持ち手(初期にはコルクも試された)。さらに使い勝手のうえでも大いに貢献してくれる球状のウッドに通された革紐は、デザイン的アクセントとしても重要な役割を果たしている。よく見るとガラス表面に小さな突起がある。これは、コーヒーの適正量を示す、いわば目安の役割を担っている。

 実際にコーヒーを入れる場合は、特製のケメックス・ボンテッド・フィルターを使用する。通常の紙フィルターに比べ 20 〜 30 % 強度がある、このフィルターは、底が平らなフィルターに比べ、科学的にも濾紙として理想的な形とされ、濾過の際、渋みの原因となる酸味と脂肪分を適度に取り除き、コーヒー本来のコクのある旨みを抽出するといわれる。ケメックスには欠かせないいわば女房的存在である。

 さて、まるで実験室の漏斗と三角フラスコを合体させたような不思議なフォルムと、先ほどケメックスを評したが、実際、このコーヒーメーカーは、実験室から誕生したプロダクトといっても大袈裟でない。というのもケメックスコーヒーメーカーを考案したピーター・シュラムボームなる人物は、ドイツ キールの富裕な家庭に生まれベルリンで物理化学の博士号を取得した化学者で、伝え聞くところによれば、彼や面倒臭がり屋の研究者仲間たちは、前々から実験室に転がっているフラスコをコーヒーメーカーの代用として日常的に使用していたというのである。つまり、その日常的な使い道をより実用的に転用したものがケメックスだったわけだ。むろん、それを市販用のコーヒーメーカーとしてデザインし直して、売り出そうと考えたのは、生涯で 300 以上もの特許を取得したといわれるシュラムボーム本人だったのだろうが、それを最初にやりはじめた化学者はきっと地団駄を踏んで悔しがったに違いない。なぜなら、 1936 年にアメリカに移住し、 1938 年にケメックスのプロトタイプを考案、 1941 年に特許申請を受理されたシュラムボームは、この特許とケメックスの大成功によって莫大な利益を得、大金持ちになってしまうからだ・・・・。

 最近、デザイナー柳宗理にインタビューをする機会があり、その下調べをしている時に、彼が機関誌「民藝」にケメックス コーヒーメーカーのことを書いていることを知った。ご存知の方も多いと思うが、柳宗理は戦後の日本を代表するデザイナーで、日本民藝館の館長を務める人物である。 1956 年に発表したバタフライスツールは、彼の代表的作品で 1958 年に MoMA のパーマネントコレクションにも認定されている。彼の父親は、白樺派と縁が深く、民藝の提唱者として日本と韓国で先駆的役割を果たした日本民藝館初代館長 柳宗悦である。

 その文章によれば、彼が長年、愛用しているというケメックスは、父 宗悦が戦後間もなくアメリカ土産として買ってきたものという。しかも、宗悦がケメックスを購入したキッカケが、アメリカのミッドセンチュリーを代表するデザイナー チャールズ・イームズの自邸においてケメックスでコーヒーを御馳走されたことに感激してのことだったというのだから面白い。後年、やはりイームズ邸を訪ね、コーヒーを振る舞われた柳宗理は、イームズ夫妻が砂糖入れの変わりに化学実験用の蒸発皿を使っていることに驚き感激することになるのだが、このイームズを巡る柳父子のエピソードは、実に示唆的だ。

 ハンドクラフトの日常品に用の美を見いだした宗悦と、用の美を機械生産による工業製品で生みだそうとした宗理。そして、ふたりが認めたイームズと、そのイームズが愛用した機能本位の実験器具を転用することで製品化されたケメックス。宗悦を感心させたそのケメックスと宗理を唸らせた砂糖入れとして転用使いされていた実験用の蒸発皿。それまでのハンドクラフトを主体とするモノ作りから、機械による効率的な工業生産に移行しつつあった 20 世紀のプロダクトデザイン史について考える時、このエピソードはなかなか含蓄に富んでいる。
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雑貨、インテリア小物も気になる商品が多い
新素材パイレックスの貢献

 20 世紀のモダンプロダクトの歴史は、そのまま新しいテクノロジーが実現してきた新素材の歴史と言い換えることができる。キッチン用品でも、ベークライト、ポリエチレン、ポリプロピレン、 ABS といったさまざまなプラスチックが試された。ガラスの分野では、なんといっても 1915 年にアメリカのコーニング社が開発したパイレックスの登場がエポックメイキングな事件だった。 1942 年にケメックスと同じ展覧会にエントリーされたパイレックスの調理鍋はガスレンジから、そのまま食卓に出せる、画期的キッチンウエアとして主婦たちから圧倒的支持を得たが、熱に強く、傷つきにくく、不純物が溶け出さない特性は、理化学の実験データなどからも高く評価されている。現在では、使用されていないが、実はケメックスのガラス本体部分も、かつてはこのパイレックスが使用されていた。コレクターズブック「PYLEX」(A Schiffer Book for Collectors)によると、 1940 年代のごく初期モデルから少なくとも 1960 年代頃までは間違いなくパイレックスが採用されていたようだ。なお、今回、このページのためにケメックスを撮影用のためお借りしたのは、服以外のインテリア、雑貨の品揃えにも定評のあるセレクトショップ ビームスだ。やはりケメックスの愛用者であるプレスの青野さんによると、まったく表情が変わらないガラス部分とは対象的に、持ち手のウッド部分が使っているちに経年変化で汚れ、味わいが出てくるのもケメックスならではの魅力では、ということである。ケメックス コーヒーメーカーには型成形による量産タイプ( 6 カップ用、 7,800 円)と手吹きガラスによるハンドメイドタイプ( 3 カップ用、9,800 円)があり、今回、撮影したのは 6 カップ用の方である。

問い合わせ先:ビームスタイム( 1 F )TEL:03-5458-4471
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ビームス
http://www.so-net.ne.jp...
店員さんのサービスが細やかでいいお店
ファーマーズテーブル
http://www.farmerstable...
ケメックスの輸入元のお店のサイト
MoMa
http://www.moma.org/
ニューヨークのMoMAのサイト(英語)
recommend
sam
NY,SOHOのカカオバー
ニューヨーク州マンハッタン、エネルギーに満ち溢れたチャイナタウンを北へ抜けると、おしゃれなギャラリーやカフェ、ブティックに彩られ、おしゃれなエリアとしてとても人気のあるソーホー地区がある。その一角に、私お気に入りのお店、MARIE BELLEは、Cacao Barというかわいい看板を掲げて、そこにあります。


金子敬二
B&W 英国製スピーカのグローバルスタンダード
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 秋葉原中心から徒歩で10分程度、湯島聖堂、神田明神の側に夢のオーディオショップが誕生した。私のオーディオ熱は、ほぼ10年単位でやってくるが、こんなお店があったらと思うようなお店で出会えた。素晴らしいお店の誕生にはその情熱にかけた熱い男達の物語がある。
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