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tab_star2002/05/03tab_endデイリーユースのフレンチスタンダード
ライヨールのソムリエナイフ
ライヨールのソムリエナイフ
出稼ぎ街道を上り、花の都パリを目指した
男達の護身道具から生まれたニュースタンダード
選・文:山口 淳
写真 :四宮義博
協力 :プロモフランス

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山口 淳_プロフィール_写真Sicon_home山口 淳
[ライター]
北欧のミッドセンチュリーの頃の椅子やプロダクトに魅せられて、かれこれ 10 年になる。縁あって、雑誌『太陽』の北欧デザイン紀行特集(2000 年 12 月号)の手伝いをしたことがきっかけで、2001 年には池袋コミュニティカレッジの「北欧インテリア入門」という講座の講師を引き受けるという貴重な体験もさせていただいた。正直、後者については、慣れないおしゃべりに加え、体系的に勉強したわけではないので馬脚をさらすのではないかと冷や汗ものだったが、この度、その特集と講座がベースとなった書籍『太陽レクチャーブック 003 北欧インテリア・デザイン』(平凡社)という本が刊行された。主要執筆者は、僕を除けば、島崎信さん、柏木博さん、織田憲嗣さんといった北欧やデザインの優れた識者、論客ばかりで、北欧デザインに興味のある人にとっての格好な入門書に仕上がっている。ご高覧いただければ、幸いである。
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蜜蜂の模様が施されている
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ナイフ部分には「LAGUIOLE」の刻印
パリ、カフェ誕生物語

 パリの、いわば風物詩ともいえるもののひとつに、カフェがある。最近では日本でもそのスタイルをまねたオープンカフェが増えているが、ロンドンのパブとも、ミューヨークのコーヒーハウスとも、ローマのバールとも違うパリのカフェは、花の都パリにとって欠かせない風景の一部といえる。
 ところが、そのパリを象徴する存在ともいえるカフェを作った開拓者たちも、そこで働く人々も、そのほとんどは生っ粋のパリジャンではない。
 パリ通で知られるエッセイストの玉村豊男さんの著書「パリのカフェをつくった人々」(中公文庫)によれば、パリのカフェやブラッスリーのオーナー、そして、ギャルソン、使用人の多くはオーヴェルニュから出てきた男達と、その子供達で占められているのだそうだ。オーヴェルニュというのは、フランスのほぼ中央から西南部にかけて広がる山地と高原地帯のエリアを大きく指す呼び名だが、フランスではオーヴェルニュといえばイコール、”大いなる田舎”あるいは”貧しい農村”を連想させるという。

 では、なぜオシャレなパリの代名詞でもあるカフェが、その”大いなる田舎者”たちによってほぼ独占的に支配されているのだろう。 詳しくは、このパリの「カフェをつくった人々」を一読していただければわかる(実際、この読み物は上質のノンフィクションとして読んでも、優れたカフェ文化論として読んでも滅法面白い)ので割愛させてもらうが、 19 世紀半ば以降、構造的不況に苦しんでいたオーヴェルニュ人たちは、食べるため仕事を求めパリに出稼ぎに出ることを余儀なくされていたのだそうだ。貧しいが、働き者で体力に秀でていたオーヴルニュの男達が、最初、始めたのは元手がかからなかった水運びの仕事であった。その仕事が上下水道の整備によって成り立たなくなると、次に彼らはやはり多くの人が重労働ゆえ敬遠していた、炭運び、炭屋の仕事に移行する。そして、その炭を売る店でオーヴルニュ人たちは副業として安くて旨い故郷のワインを売り始める。うら寂しい横町や裏通りにある彼らの店は、仕事をさぼって一杯ひっかけるには、まさにうってつけだったようでカウンターだけの店でも、大流行り。 しかも、炭屋の忙しい時期は、オーヴルニュは農閑期ということもあって、炭屋の主人達は冬の間だけ故郷から親戚や知人を呼び寄せるという方法とったため、商売は非常に効率的でライバル達もなかなか太刀打ちできなかったようだ。結果、その炭屋兼飲み屋は、経営者も働き手もオーヴルニュ人たちで占められてゆくことになる。この飲み屋の性格上、回転が極めていいこともあって、悪くない商売になることがわけると、いつしかこれを専業として始める者が現れ始める。 
 これが、パリのカフェの起原である。
 実際、パリを代表する有名なカフェ やブラッセリー のオーナーのほとんどがオーヴェルニュとパリまで続くそのエリア一帯の出身者なのだそうだ。
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水牛角のハニーホーン
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オールアルミ
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合板のスタミナウッド
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天然木のブライヤー
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スタルクデザインのナイフ
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シンプルな3ピースのソムリエナイフ
ライヨールナイフ生まれる

 そして、実はここで取り上げるライヨール(= LAGUIOLE。日本ではラギオール、ラギヨールと表記されることも多い。フランスでもラギオールと発 音する人がいるが、ライヨールナイフの輸入元によればライヨールがポピュラーで正しいよう。以降は便宜上、固有名詞を除き ライヨールに統一させていただく)のソムリエナイフの起原もその誕生の背景を辿 ってゆくと、そのオーヴェルニュ人のパリ進出の歴史と密接にリンクしている。
 オーヴェルニュ人たちがパリを目指したルートのうちで最も有名なのはオーブラックからサンフール、そしてパリへと続く道で、この街道は俗に「出稼ぎ街道」と呼ばれていた。但し当時、このあたりにはパリを目指す男達のなけなしの懐を狙った追い剥ぎや山賊が出没し、決して楽な道中ではなかったようだ。そして、このルートの途中に牛の市場と刃物の名産地として名高いライヨールという村があった・・・。
 勘のいい方ならきっとピンとこられたことだろう。そう、パリへ向かう男達が自分の全財産と身を守るため、村の鍛冶屋に作らせたライヨールナイフと呼ばれたナイフこそが、ライヨールのソムリエナイフのルーツなのである。

 このライヨールナイフの特徴は大きく 3 つある。ハンドルにホーン(牛の角)を用いていること。折り畳み可能なこと。そして、ディテールの一部に蜜蜂(蠅という説もある)のモチーフが施されていることである。蜜蜂については諸説あるが、牛の角をハンドルに用いたのは、その牛の市場として栄えていたという土地柄から最も入手しやすくポピュラーだったのが牛の角だったからだった。折り畳み可能なデザインも道中、ポケットに入れておいても邪魔にならないようにとの配慮からだったろうことは想像に難くない。
 貧しい村から、都会に出稼ぎに行かねばならなかった男たちにとって、きっとそのナイフは単なる護身道具ではなく、故郷を思い出すためのきっと大切な品でもあったはずだ。彼らは、ライヨールナイフでパンやチーズを切る時、ワインのフォイルをカットする度に故郷の家族や恋人の顔を思い出していたに違いない。いや、もしかしたら、渡り鳥のようにカフェを渡り歩く、ギャルソンのなかには現在のソムリエナイフに近いものをカスタムで作らせていた者もいたかもしれない。
 1980年代始め、一時、絶滅の危機に瀕していたライヨールナイフの火を絶やしてはならないとライヨールナイフ協会を設立したのも、パリで成功していた地元の名士や有名なカフェ コストのコスト兄弟ら、この村周辺の出身である業界関係者たちだった。 1987 年に正式にライヨール社が設立されると、世界的にその名を知られるデザイナー フィリップ・スタルクがライヨールナイフをモディファイさせたモダンなフォルムのナイフをデザイン。ライヨール社は、伝統的なライヨールナイフに加え、ソムリエナイフ、異素材のボディを使ったモデルを次々と発表し、本家ライヨールナイフは奇跡の復活を遂げることになる。

 ここで紹介しているのが、その新生ライヨールナイフのラインナップの一部である。
 現在、市場には、ライヨール村で製造されていなくともライヨールを名乗るナイフやソムリエナイフが出回っているが、そのスタイルの基本はもともとはこのライヨール村で製造されていたライヨールナイフがお手本となっていることだけは明らかである。確かに、それらには実用面、機能面で決定的差はないのかもしれない。しかし、出自にこだわればやはりライヨール村のソムリエナイフに軍配をあげたくなるのが人情というものであろう。


 写真上よりハニーホーン(15,000 円)、オールアルミ(23,000 円)、ブライヤー(15,000 円)、スタ ミナウッド(13,000 円)、スタルクデザインのナイフ(18,500 円)、トラッドな 3 ピースソムリエナイフ(16,500 円)

問い合わせ先:プロモフランス tel:03-3404-1037
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