 |  |  | | | クランツ | | ブレーキパッドの天才 |  | あるとき雑誌を読んでいたら、「アルミホイールを汚すブレーキダスト(黒い鉄紛)や耳障りなブレーキ鳴きを限りなく減らし、またその快適性と共に、対摩耗性と耐久性という相反する性能の飛躍的な向上をも同時に実現」という、まさに夢のような謳い文句の宣伝にであった。 私の愛車はアルファ GTV 97 年で、特にこのクルマだけというわけではなく、欧州車全般に言えることだが、ブレーキダストによるホイールの汚れには常々閉口していたから、まさにこのコピーに惹かれてしまった。もう一台所有のローバーミニに至っては、ホイールを BBS に変えたことに後悔の念を抱くまでになっていたので尚更だった。 結局、私のアルファ、ミニは 2 台ともクランツ製のパッドとなり、ホイールは汚れなくなり、鳴きも止まり、さらにはブレーキフィーリングは極めて良好となった。私はクランツの製品とその店、顧客との関係作りに感銘を受けてしまったのである。クランツのユーザーになりほどなく 2 年経ち、この製品の謳い文句は実証されているである。
これまで私は、普通のお客さんとして付き合ってきたが、今回は取材させて頂き、 VividCar の長期レポート車 BMW M5 のブレーキパッドを交換しながら、製品の謎に迫った。 |  | 文・永山辰巳 写真・若林正幸
株式会社クランツ 〒123-0873 東京都足立区扇2-26-37 Tel:03-5838-7621 Fax:03-5838-7626 http://www.kranz-automotive.co.jp/
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|  |  |  |  |  |  | 永山辰巳 [VividCar 元編集長] |  |  |  | | 2006年、VividCarはプロフェッショナルなブロガーを目指します。創刊以来5年を迎え、ちまたのブログサイトとは一線を画するVividCarは、ネットワーク知識編纂をビジョンに確実にコンテンツを増やしながら未来のWebBookメディアを開発してきました。私たちはこれをWebフォトジャーナルシステム呼びます。生涯にわたり記録し続け知識を編纂する楽しみをごいっしょに。 |  |
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 |  |  |  |  |  | | 愛馬 GTV の足回り。クランツの最高峰、ギャルビン・アウトシュポルトを装着している。ショックはアラゴスタ。 |  |
|  |  | 必要は発明の母なのだ
彼は、現在のブレーキパッドのビジネスの前は 16 年間ホイールの販売を手がけてきたそうだ。 当然ながらホイールは汚れ、しかも鉄粉はハードな走りをするとホイールに焼きついてしまい普通の洗車では落ちなくなる。その必要性は、彼をなんとブレーキパッドの研究開発に向かわせたのである。
予断ではあるが、クランツがその製品を販売したのは、今から 11 年前であり、私はそのころ日産の追浜の研究所にいた。ちょうど同じ研究室の仲間がブレーキの研究をしていて、ブレンボを目標性能にしていた。もとよりブレーキのメカニズムには興味があったので、同僚からいろいろと教えてもらったが、ディスクブレーキの科学的な説明は諸説あり、何が真であるかは判らないのだと知り驚いた記憶がある。 日産はその後 GT-R で量産メーカで初のブレンボを採用している。 |
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 |  |  |  | 他社の製品よりもかなり値段は高い。 しかし、その性能は折り紙つきだ。 |  |
|  |  |  | 止まらないブレーキ
クランツの山岡氏は、いとも簡単に説明してくれた。 ブレーキ性能において、ストッピングパワーばかり求めるとストリートユースでは歪んだ製品になる。だから最初の発想として「止まらないブレーキパッド」を考えたそうだ。目標性能は、「汚れない、減らない、止まらない」。最初の二つは良く理解出来るが、最後のは難しい。クランツのパッドがあまりにも良く効くことを体験している私には、単なるエキセントリックな表現としか聞こえなかったのだが、暫くして ABS を思い浮かべて、止まらないブレーキのコンセプトを理解し合点がいった。 製品化の最初のヒントは DD モーターにあった。 DD モーターは、実はリアルタイムのサーボブレーキが正体である。そして DD モーターは精密パッケージであるからダストは許されない。つまり身近なところにダストの出ないブレーキシステムがある。 次に彼は、新幹線のブレーキを調査した。車輪は汚れていないからだ。素材の中にレジンが使われているを突き止め、レジンの特性上、耐熱性と耐摩滅性が著しく向上するが、それでは全く止まらないのだそうだ。スチールを配合すると良く効くようになるのだが、それだとダストが盛大にでることになる。添加剤としてアルミもスズも使ったが駄目だったそうだ。最終的には、開発には 2 年かかるがその間製品のテストは身を持って行い、何度も死にそうなったとか。 鍵は砲金だったそうだ。砲金は銅の焼結材であり、硬度がかなりあがるが摩滅のメカニズムが他の材料とは違うらしい。彼は、レジンと砲金をブレンドすることで、目標性能を達したのである。 |
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 |  |  |  |  | 板材で焼き固め組成の均質性にこだわる。 パッドとパッド周りの小さなパーツとその組み込みにもこだわる。このこだわりから、彼の目標とする性能が達成されている。 |  |
 |  | | 11年前に製品を発売したときからシリアル番号をつけている。それもお客様の目には触れないところに付けていた。 |  |
|  |  | 製法と品質管理
ブレーキパッドのアフターパーツは、何もクランツだけではない。スポーツブランドとして名を馳せているところはいくつかある。山岡氏が自信を持っているのは、単に汚れない、減らないという付加性能だけではなく、品質重視の製法と品質管理に万全を期していることである。その結果大手ディーラの純正パーツにまで採用された。
彼は、パッドの作り方を説明してくれた。普通パッドは材料費を最適化するためにパッド形状の型に材料を流し込み焼き固める方法で造られる。たい焼きを想像して欲しい。しかし、クランツは写真の用に板材からダイアモンドカッターでパッドを切り出す。これだと製造コストが跳ね上がるのは素人でも分かる。だが、山岡氏は、型材に流し込んだパッドのほうはパッド内の狭い領域で材料の組成分布が均一にならないことが、パッドの性能にひどく影響することを理由に、なるべく均質になるように大きな板材を作り、切り出す方法を採用している。これだとパッドの対角線上での組成はまったく変らないのだそうだ。パッドの対角線上で組成が変らないということがブレーキの効きや摩滅、そして鳴きに影響するというのは、説得力があるし私もそう思える。
さらに、彼は自慢げにパッドの裏面のしかも普通の人には見えない部位にシリアル番号を記載して、品質管理と性能の飽くなき追求をしようとしている。ベースユニットの結合やキャリパーなどへの装着の際のクッション材など、あらゆるところに彼の性能主義が見て取れる。 |
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 |  |  |  | クランツのオーナー、山岡氏。 始めは彼の人柄に面食らうが、実に楽しいクルマ人生を送っている人。 |  |
|  |  |  | 万能のパッドはない
そんな優れたクランツのパッドでも、限界はある。サーキットでのスポーツ走向には向いていないそうだ。どんな温度域でも、オールマイティに効くようなブレーキはあり得ない。だから、お客が温度域に気にしたり、矛盾した要求をあれやこれやいってくる場合は、クランツの製品が向いていないことをはっきり伝えることにしているそうだ。あと、何もブレーキ性能はパッドだけじゃ決まらない。ローター、キャリパー、ホース、オイル、後づけで作業や交換出来るものは、すべて関ってくる。 それとクルマそのもの。クルマの前後の重量バランスが悪いと結果は思ったほど上がらないそうだ。 よく、ブレンボのローターを付けたお客様が来るけど、たいていは、加工しないと駄目な場合が多いという。ローターの平面度や加工精度が十分でなく、パッドの性能が十分に発揮出来ないのだそうだ。ローター研磨はそのためにあるが、ローター研磨は費用が増すのと、大切なローターを研磨することに嫌悪感を抱く人もいるそうだ。 |
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|  |  |  | お薦め :
|  |  |  | 彼のショップでパッド交換をすると、足回りがむき出しになるので、いろんな指摘がしてもらえる。その指摘は彼らが余暇でレースを楽しんでいるからこそ出来る指摘が多い。自分達で足回りをやっているからこそ、ノウハウがある。もちろん彼らはそのためのメニューは持っていないが、パッドを交換することを通じて、クルマの足回りについてこれだけいろんなことが教えてもらえるショップはそうないだろう。 |  |
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