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tab_star2001/10/23tab_endマン島TTレース
マン島 TT レースの観客
雑誌「MILLION」より
 普段は人の数よりも海鳥や羊の数の方が多い島に、フェリーから続々オートバイが降りてくる。その様子はさながら聖地を巡礼する旅人のように晴れがましく見える。それぞれが手塩にかけて育てた「鉄の馬」にまたがった騎士達は、外見のいかめしさとは裏腹に、どの顔も穏やかで、静かな眼差しをたたえている。それは、この時期のマン島がバイク乗りには格別な意味をもっているからだ。
 通称「マン島 TT レース」1907 年に始まったオートバイレース「ツーリスト・トロフィーレース」は特別なレースだ。1 周 60 km 、島の生活道路をコースに行われる公道レースというということに加え、オートバイを「文化」として分かち合うことのできる人々が、世界からこの小さな島に集う。そのことが TT レースを特別なものにしている。
文章:高安正樹
写真:福岡耕造
協力:ミリオンカード

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高安正樹_プロフィール_S.jpgicon_home高安正樹
[ライター]
クルマの写真が全然無いので「ガレージマスター」というよりも、ギャラリーマスターって感じのホームです。気まぐれに、アート系のことなどを紹介していきます。
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リバプール 男の後ろ姿

 「モダンブリティッシュ」を合い言葉に、新たな都市へと生まれ変わっていくロンドンから約 3 時間、リバプールへ来るとその様子の違いに愕然とする。
 どことなく薄暗い街並み。活気のない人の群れ。もう 6 月だというのに、アイリッシュ海から吹きつける雨まじりの風は冷たく、街から人影を消して吹き抜けていく。
 マン島へと渡る前夜、賑わう声に誘われて一軒のバブに入ると、この街の人たちを熱狂させる唯一の楽しみ、地元リバプールの選手がテレビのなかで戦っていた。私はそのサッカーを観戦しながら、「このリバプールの街のように、マン島 TT レースも時間の彼方に忘れられた寂しいものじゃないだろうか?」ふと、そんな疑問を抱いた。
 翌日も雨。フェリー乗り場には続々と大型バイクにまたがった連中がやって来る。国籍はまちまち。ヨーロッパ中のさまざまなナンバープレートをつけたバイクが、フェリーへの乗り込み待ちで埠頭に列を作っていく。
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フェリー

 TT レースを目指してバイク乗り一色になるフェリーの船内は、さながらレースの興奮が始まっているような熱気にみなぎっている。
 フェリーはリバプールか、その北の港町ヘイシャムからマン島の中心地ダグラスへ、 1 日 5 便程度が運行している。所用時間はどちらからも約 4 時間。近代的な高速船だ。 TT レースの開かれる 5 月下旬から 6 月上旬に島を訪れるなら予約は是非にも早めにしたい。
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イギリスとマン島の位置関係地図

 古来、「マン島からは 6 つの国を見ることができる」と言われてきた。マン島、イングランド、スコットランド、ウエールズ、アイルランド、そして 6 つ目は天国。
 アイリッシュ海に浮かぶこの島は、滴るように緑が鮮やかな島だ。海岸線に沿って起伏の連なる丘が続き、雲間から陽が差し込む光景は息をのむほど神々しい。大きさは、南北約 52 km 、東西 22 km 。人口 7 万人余りに、その倍以上の数の羊がいる小さな独立国だ。
 アイルランドのケルト文化が世界的に注目を集めているが、「マン島こそが最もケルト文化を色濃く残している」という人もいるほど、島は神秘的で素朴な美しさに満ちている。
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キャンプ場とバイク

 ダグラスのプロムナードには小さなホテルが軒を連ねるが、 TT レースをめざしてやってくるバイク乗りたちを収容するには、とてもじゃないが部屋が足りない。そこで、牧場を開放した臨時のキャンプ場が開設される。
 しかし、残念なことに 2001 年 TT レースが中止になったのは、詳しい事情はわからないが、この牧場のためかもしれない。イギリスで発生した家畜の病気「口蹄疫」の被害拡大を恐れて伝統のレースは中止になったそうだ。
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トライアンフ

 私が訪れた昨年は、いくつかの牧場が広大なキャンプ場になっており、キャンプサイトは「妖精の棲む森」と絶賛される山並みを背景に、色とりどりのテントと大型のバイクが置かれていて壮観な眺めだった。
 枯れ枝に国旗を掲げる者、たき火を囲んで夜更けまで語り合う者、肩を抱き合って再会を祝う者。普段は何かと肩身の狭い思いをしているだろう大排気量のバイクに乗る大人達が、無邪気に心を許し合っている。
 自分の好きな事を知っていて、思う存分にその事に打ち込んでいる人は、なんともいい顔になる。そんな幸せ者ばかりが5万人も大挙して上陸し、朝から晩までバイク漬けになっていると、島全体がまるで笑顔の洪水のようになってくる。
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マン島マーク

「バイク乗りの集り」というと、なにやら物騒で近づき難い印象があるかもしれないが、この時期のマン島はその正反対。争いやトラブルらしいことはひとつも目にすることがなかった。集まれども群ず、飲めども騒がず。騎士道の国のバイク乗り達を見ていると「オートバイ乗り」というのは、自立した大人のひとつの生き方なのかと思わされた。
TT レースのシンボルでもあり、島の自治の証でもある「3 本足の紋章」を剃り込んだキャンパーたち。
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ひげのおじさん

 TT ウイークのマン島で、何といっても目につくのが年輩のライダーたちだ。仕事を離れ、子育てを終え、自分の時間を思う存分に使うことのできる身分になった今こそ、彼等は長年の夢、TT をめざして愛車とともに聖地に乗り込んでくる。
 リバプールでの夜、ふとアタマをよぎった「マン島 TT レースも時間の彼方に忘れられた寂しいものじゃないだろうか?」という疑問は杞憂に過ぎなかった。TT ウイークのマン島には、今を生きる人々の夢がいっぱいにあふれていた。
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教会の観客

 TT レースは島の幹線道路を使って行われる完全な公道レースだ。さまざなクラスのレースの予選や本戦が行われるその度に、島の交通はほぼストップしてしまう。そんな不便にも関わらず、島の人々は TT レースを心から楽しんで、このレースが開催されることを誇りに思っている。
 メインの F1 クラスの行われる日は学校も休み。ケルトクロスの墓石のある教会の横では、家族総出でレースを観戦する親子連れに会った。
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UFJカード
http://ufjcard.com/
ご協力いただいたミリオンカードの定期発行雑誌「MILLION」はUFJカードになり「NEO」という定期発行雑誌になりました
スペースキッズ
http://homepage1.nifty....
ライターの高安さんの主催するギャラリー
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 連載第一回の「マン島の観客」のギャラリーです。一点一点ゆっくりお楽しみ下さい。
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マン島 TT レースの環境
 美しい島の公道は、夏のひとときオートバイ乗り達の楽園に変わる。
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