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tab_star2001/05/06tab_endクルマの王道セダンボディ
濃いベンツ、薄いベンツ
メルセデス・ベンツの世界戦略
 かつては「最善か無か」を標榜し、高品質高価格のクルマを少量だけ製造していたダイムラー・ベンツ社(当時)は、 1992 年の旧型 C クラス発表時辺りからクルマ造りの方針を一変させた。「最善か無か」ではなく、「コストとマーケットを考慮したクルマ造りを行い、綿密なマーケティングに基づいた多車種大量生産」を行なうというのだ。
 それまでは、コストを度外視してスゴくいいクルマだけを造り、その結果として価格が上昇しても少ししか造っていないので影響はなかった。ライバルはおらず、マーケットで競争する必要がなかったからだ。乗用車が 190 シリーズ、 E 、 S の各クラス、バリエーションとして E のクーペとコンバーチブル、ワゴン、スポーツ&ラグジャリーの SL 、特殊な G クラスだけを造っていた。そこを、 190 シリーズを C クラスと改称すると同時に、コストも考えたクルマ造りを始めた。
 また、派生車種や新規開発車種を、どんどん増やしていった。 SLK 、 CLK 、鳴り物入りの A クラス、 ML 、 V 、 C のワゴン、スマート等々。 スリーポインテッドスターのブランドイメージはまだ神通力を失っていないが、これだけ車種が増え、“下界の”ライバルたちとの競争を強いられるようになっては、かつての“最善か無か”の頃のメルセデスベンツのテイストも、濃淡が大きくなってきた。それぞれ 4 台ずつを選んでみた。
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金子浩久_プロフィール_写真Sicon_home金子浩久
[自動車評論家]
 ミニ・クーパー S の国際試乗会に招待され、ポルトガルのリスボンに来ている。ノーマルのクーパーも素晴らしいが、クーパー S はもっとスポーティに仕上がっていた。
今日もこれから、カスカイスやエストリル周辺の海岸沿いのワインディングロードを走ってくる。この辺りは、10年以上前にポルトガルグランプリをよく取材に来たところで、いろいろな思い出があって懐かしい
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MERCEDES BENZ_C200_M
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MERCEDES BENZ C200
(メルセデスベンツ C200)

 スーパーチャージャー付き 2 リッター 4 気筒エンジンがリファインされた。レスポンス鋭く、回すほどパワフル。足回りも、ワインディングロードを飛ばせば飛ばすほど、グッとボディを沈み込ませ、舐めるように路面を捉えて離さない。 BMW とは方向性が異なるが、こちらも非常にスポーティだ。左右方向にマニュアルシフトできる 5 速 AT も秀逸。右ハンドルを選ぶと、右(つまり自分の方)にレバーを倒すとシフトダウンするのがとても使い易い。スポーティに運転すると、クルマがちゃんとそれに応えてくれて、よく走ってくれる。ドライバーとのコミュニケーション能力の高さ、懐の深さが、濃い。
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MERCEDES BENZ_CL600_M
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MERCEDES BENZ CL600
(メルセデスベンツ CL600)

 鯨のように巨大な 2 ドアクーペボディを 6 リッター V 型 12 気筒で引っ張るというコンセプト自体が、濃い。メルセデスベンツには、このコンセプトは伝統的に継承されてきているが、今の CL はそれにハイテクを加味している。絶妙の乗り心地を実現するアクティブサスペンション、低負荷時は片バンクの 6 気筒を休止して燃費を稼ぐシステム等々。値下げしても、1,460 万円という価格なりの内容を持っている。
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MERCEDES BENZ_ML270_M
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MERCEDES BENZ ML270
(メルセデスベンツ ML270)

 ML 320 は“薄い”が、この 270 CDI は“濃い”。なぜならば、オーストリアで製造されているのだ。ユルい操縦感覚も改められ、優秀な最新ディーゼルエンジンを体感できるのが“濃い”。日本やアメリカでは極悪人のように称されているディ−ゼルも、ヨーロッパではキチンと有害物質を削減していることと CO2 (二酸化炭素)の排出が少ないことから人気者だ。技術の本質を見据えて造られたクルマであるというところが“濃い”。事なかれ主義で安易なマーケティングを行なうインポーターだったら、現在の日本にディーゼルのこの車種を導入しなかっただろう。ダイムラー・クライスラー・ジャパンは主張と見識を持っている。
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MERCEDES BENZ_G320_M
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MERCEDES BENZ G320
(メルセデスベンツ G320)

 なんといっても、 NATO 軍から依頼されて開発製造を始めたというストーリーが大きい。しかし、いま日本で販売されている G クラスは軍用車そのものではなくて、使い易いフルタイム 4 輪駆動に改めたれた“民生用”。あらゆる部分が強固で頑丈に造られていながら、メルセデスベンツの乗用車と共通した上質でシットリとした感覚を持っているところが、とても“濃い”。
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MERCEDES BENZ_A160_M
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MERCEDES BENZ A160
(メルセデスベンツ A160)

ここからが薄い4台

 鳴り物入りで登場した、メルセデスベンツ初の前輪駆動小型車。たしかに、パッケージングは革新的で、ハンドリングは秀逸だが、これ 1 台ですべての用途をまかない切れるかどうかが不明だ。ライバルのフォルクスワーゲン・ゴルフの方が、多用途性においては数段上。新しい小型車像を提示したのは“濃い”が、身銭を切るユーザーからすると、シティコミューター的な内容が“薄い”。
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MERCEDES BENZ_S320_M
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MERCEDES BENZ S320
(メルセデスベンツ S320)

 S クラスには、 6 気筒の 320 、 V8 の 430 と S 500 、 V12 の S 600 がある。自動車専門誌や訳知り風のマニアは、「 S 320 がベスト S クラス」と言うが、そうは思わない。 320 と 500 ではエンジンだけでなく、サスペンションのチューニングや各部のセッティングなどが全然違う。乗れば、S 500 の方が濃密で、圧倒的で、威圧的なのは明らかだ。
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MERCEDES BENZ_ML320_M
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MERCEDES BENZ ML320
(メルセデスベンツ ML320)

 ML 320 が“薄い”のは当然かもしれない。アメリカ工場製で、アメリカのマーケットで大量に販売することを目標にされたクルマだからだ。乗ると、どこのクルマだかわからなくなる。アメリカ製や日本製の、クロスカントリータイプの 4 輪駆動車と変わるところがどこにもない。古今のメルセデスベンツに共通する、上質なタッチがどこにも見受けられない。
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MERCEDES BENZ_V230_M
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MERCEDES BENZ V230
(メルセデスベンツ V230)

 世界で一番優秀なワンボックス車を造る日本に住んでいると、 V 230 は商用車に見えてくる。フォルクスワーゲンとパーツを共用化し、スペインで製造されていることを顧みれば、それも無理はないだろう。乗用車的なワンボックスではなくて、荷物をたくさん積み込んでガンガン走り倒すような使い方をすると“濃い” 1 台になるのではないでしょうかね。
 ワンボックス車をセダンの代用として使う日本では、 V 230 は商用車やマイクロバスのように素っ気ない。その素っ気なさが、“薄い”。
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