 |  |  | | | 永遠ボディー・アルミ製バッグ | |  | 日本のエンスーが全幅の信頼を置く 凄腕板金屋が作る、純アルミ鍛造の逸品 |  | 選・文:山口 淳 撮影:四宮義博 撮影協力:永遠ボディ
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|  |  |  |  |  |  | 山口 淳 [ライター] |  |  |  | | 北欧のミッドセンチュリーの頃の椅子やプロダクトに魅せられて、かれこれ 10 年になる。縁あって、雑誌『太陽』の北欧デザイン紀行特集(2000 年 12 月号)の手伝いをしたことがきっかけで、2001 年には池袋コミュニティカレッジの「北欧インテリア入門」という講座の講師を引き受けるという貴重な体験もさせていただいた。正直、後者については、慣れないおしゃべりに加え、体系的に勉強したわけではないので馬脚をさらすのではないかと冷や汗ものだったが、この度、その特集と講座がベースとなった書籍『太陽レクチャーブック 003 北欧インテリア・デザイン』(平凡社)という本が刊行された。主要執筆者は、僕を除けば、島崎信さん、柏木博さん、織田憲嗣さんといった北欧やデザインの優れた識者、論客ばかりで、北欧デザインに興味のある人にとっての格好な入門書に仕上がっている。ご高覧いただければ、幸いである。 |  |
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 |  |  | 日本の町工場の高い技術
小田急線相模大野駅を降り、タクシーで約 10 分 。クルマを降りると、典型的な町工場という表現が似つかわしい趣の建物が立っている。表に大きく「永遠ボディー」という文字。英字で TOWA BODY とある。 永遠とかいて「とわ」と読む。我々の世代なら、映画『宇宙戦艦ヤマト』最終版を思い浮かべそうなネーミングだが、いわゆるガレージキットのアトリエというわけではないことは、工場に一歩足を踏み入れるとすぐ分かる。真っ先に目に飛び込んできたのは、フルカスタム中の車両だった。ついニンマリと微笑んでしまう。どうやらスチールボディをアルミに置き換えるという大胆なカスタムオーダーの途中の ようだ。まったく、世の中には酔狂なクルマ乗りがいるものである。
そう、ご推察のように永遠ボディーは、俗にいう板金工場である。ただし、並の板金屋ではない。北は北海道から南は九州まで、その腕を頼ってフェラーリ、ロータスといった高級車乗りまでがわざわざ運送費を負担してまで自慢の愛車をよこし、レストアやカスタムを依頼してくる知る人ぞ知る名工場なのである。最近、テレビの特番などで、ミクロン単位の仕事を、指と勘で機械よりも精密にこなし、NASAや世界のトップ企業と五分に渡り合う日本の町工場の高い技術や技が紹介されているのを見かけることが少なくない。極めれば機械にも超えられない神憑り的領域が職人の世界には、まだまだたくさんあることを我々は改めて知るようになった。
永遠ボディーも、また伝統的技と手仕事を真摯に継承している、昔気質の工場のひとつといっていい。扱うのは FRP の他スチール、ステンレス、アルミなど金属全般。仕事のほとんどはクルマのレストア、カスタムだが、板金の領域に属することなら時には家具や小物などなんであろうと手がけるという。 「依頼があれば、我々の板金の技を発揮できるものなら基本的にはどんな注文でも受けますよ。我々はアーティストでもないし、マニアックな名車だけを選んで商売をしたいと思っているわけでもありませんから」 社長の松村敬一氏は、いかにも下町の町工場のオヤジ然とした物言いでそうきっぱりと語る。とはいえ、現実には、今の時代、同じような板金工場は次ぎ次ぎと営業を維持できず消えていっている。この仕事、決して楽な商売ではない。
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 |  | 伝統的手仕事と世界の技術の習得
「板金工場のほとんどは、宣伝や営業が苦手なところが多いからでしょう。正直、ウチは仕事には絶対の自信を持っているけれど、とはいえ日本一とは自惚れていませんよ。私やウチのベテランより腕のいい職人は世の中にはたくさんいると思います。でも、腕がいいからといって、今の人は名もない町工場になかなか仕事を頼んではこない。系列下の崩壊という製造事情の変化がなんといっても決定的だったわけですが、町工場の衰退は口コミ以外、一般の顧客を呼ぶ術がなかなかないという事情も大きいんです」
もちろん、そうなってしまったのは、リーズナブルな明瞭会計を打ち出している大手の戦力・戦術の巧さや、こ綺麗な店構えにして現場と直接ではなく爽やかに窓口が対応してくれる演出に有名チェーン店などが長けているということが大きい。とはいえ、そういった宣伝・営業に長けているところは、効率至上主義が支配し、職人の教育・育成などにあまり力を入れていないという傾向があることも否めない。最低でも 5 年は修得にかかるといわれる板金の教育の手間を惜しんで、簡単にできる仕事だけを大量にこなすシステムをその性格上作り上げてしまっているからだ。そして、大切な得意先から来た難しい注文に関しては自分たちの手に余ると、この永遠ボディーのような町工場に仕事を回すというシステムができあがってしまっている。
たとえば、その典型的な例にアルミのドアの修理についての間違った常識がある。メーカーや大手の工場などでは、凹みなどは修理不可能で交換するしかないと顧客に説明しているところがほとんどだが、松村社長は「ちゃんと叩けば、アルミの凹みやキズは直るんですよ。ただ、それをできる職人がなかなかいないだけ。でも、昔の板金屋なら、こともなげにこなした基本的仕事ですよ」と、にべもない。表情は淡々として穏やかだが、そこには腕自慢の職人を抱える町工場独特の自信と矜持が溢れているように見える。ちなみに、ここでいうアルミとは俗に純アルミと呼ばれる柔らかく扱いの難しい、しかしアルミ本来の持ち味が最も発揮される金属を指す。一言でアルミといっても、実はプレスで量産できるアルミと、永遠ボディが扱う純アルミは随分と違う。一般に工業製品に使われるアルミはプレス加工が容易なように他の金属とブレンドされたアルミ合金が使われている。たとえば、ゼロのトランクやマグライトといったアルミ製品は、そのアルミ合金が使用されている。 一方、永遠ボディが扱うのは純アルミだけである。独特の輝きと艶。トロッとしたアルミ本来の柔らかさが、最も発現するのが、この純アルミだが、とにかく扱いが難しい。ただし、丁寧に叩けば叩くほど、つまり鍛造すれば固くなるこの純アルミは、板金の優れた技がストレートに発揮される素材といっていいだろう。
ところで、永遠ボディーが他の町工場のように時代の趨勢に負けることなく生き残ってのは、もちろん、その仕事に対しての評価が高く、特定の顧客に指示されていることが第一の理由だが、それだけではない。ここの特筆すべき点は、ただただ昔ながらの手仕事を頑なに継承するだけでなく、英国のコーチビルドダーなどとの交流などを通じ、海外の技術・手法や技を積極的に導入したり、板金屋の常識に囚われず、しかし、その専門分野の延長線上で遊び心のある新しい試みにも積極的に取り組んでいることにある。 |
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 |  | 名車・旧車の味わいを持ったバッグ
松村氏の長男、敬太氏の提案がきっかけで数年前から手がけているという、この純アルミのバッグは、まさにその典型的な試みのひとつといえる。自分たちの作品といえるものを作り、広くその技術を知ってもらうきかっけになればとはじめた、このバッグは、デザインを永遠ボディとは別に敬太氏が所属するプロペラ、製作を敬一社長を始めとする永遠ボディーの板金職人たちが、ひとつずつ叩いてハンドメイドで作っている。アルミと組み合わせているのは、凹みやキズによる経年変化の味わいと相通じるものがあると選ばれた植物タンニンで丁寧になめされたタンレザーだ。それを繋ぐ真鍮のリベットの三位一体のハーモニーがなんとも見事で、その印象は一種の工芸品の完成度を思わせる。全体に漂う雰囲気やディテール、とくにアルミの仕上げやリベットの佇まいに、機械製造では絶対に出ない、手仕事ならではの味があり感心させられる。武骨さと丁寧な手仕事が両立する様は、いってみればワイルドエレガンスといった印象で、それはどこかこの工場にやってくる名車・旧車の佇まいと似ていなくもない・・・。
永遠ボディのバッグは、本業の合間をぬっての作業のため、ほとんど市場にも出回っておらず、ご存知の方はきっとさほどおられないだろう。しかし、その量産品とは異なる独特のニュアンスと製造に要するその手間と仕事を考えれば、これほどリーズナブルでエモーショナルなアルミバッグは世界中探してもそうそうないはずである。 永遠ボディのバッグは、1930 年代の英国のイングリッシュホイールで純アルミ板を圧延し、木槌での叩き出し、溶接、ハンマーによる「ならし」、リベット打ち、仕上げのやすりまで、ほぼ全行程を、ひとりの職人が責任を持ってすべて手仕事で担当する。すべてシリアルナンバー入り。 |
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 |  |  |  | 写真は、TB03、オープン価格。 他にも、デザイン・サイズにバリエーションがあり、なかにはやはり同社の技術を反映したフェラーリレッドの限定モデルなどもラインナップされている。
問い合わせ先:Propeller co.,Ltd TEL:042-766-5464 |  |
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