 |  |  | | | マグ・インスツルメントのマグライト | |  | | 極上アルミ合金を削りだして作る世界一タフで機能的な懐中電灯 |  | 選・文:山口 淳 撮 影:四宮義博 撮影協力:株式会社エイアンドエフ
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|  |  |  |  |  |  | 山口 淳 [ライター] |  |  |  | | 北欧のミッドセンチュリーの頃の椅子やプロダクトに魅せられて、かれこれ 10 年になる。縁あって、雑誌『太陽』の北欧デザイン紀行特集(2000 年 12 月号)の手伝いをしたことがきっかけで、2001 年には池袋コミュニティカレッジの「北欧インテリア入門」という講座の講師を引き受けるという貴重な体験もさせていただいた。正直、後者については、慣れないおしゃべりに加え、体系的に勉強したわけではないので馬脚をさらすのではないかと冷や汗ものだったが、この度、その特集と講座がベースとなった書籍『太陽レクチャーブック 003 北欧インテリア・デザイン』(平凡社)という本が刊行された。主要執筆者は、僕を除けば、島崎信さん、柏木博さん、織田憲嗣さんといった北欧やデザインの優れた識者、論客ばかりで、北欧デザインに興味のある人にとっての格好な入門書に仕上がっている。ご高覧いただければ、幸いである。 |  |
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 |  |  | アルミニウムという素材
ここのところ、新製品の発表会などでアルミニウムを取り上げたプロダクトをしばしば見かけるようになった。思い出すままにあげてみてもフィリップ・スタルクとアラン・ミクリのコラボレーションから誕生したスタルクアイズの新作サングラスのシリーズ(余談だがアメリカ篇で取り上げたスタルクデザインのエメコの椅子もアルミ合金製である)、オーディオのバング & オルフセンの優雅な DVD プレイヤー BeoCenter 2 、ボーイングの部品などを製作している板金工場エアロコンセプトとセレクトショップ、ユナイテッドアローズがインディーズの家電レーベル「リアルフリート」仕様のダイナブックのために手がけた PC ケースなど、ここ約 1 ヶ月だけでも印象的なアルミニウムのプロダクトが 3 カテゴリーあった。 ちなみに、この 3 つの中で最後の PC ケースは、正確にはジェラルミン素材を名乗ってはいるが、ジェラルミンもアルミ合金なので、同じアルミ仲間としてエントリーして差し支えないだろう。実際、我々がよく目にしたり、耳にするアルミニウム製品のほとんどは、アルミ合金製品のことを指している。 前回取り上げた永遠ボディのバッグのようなケースは例外で、純アルミの加工は厄介で金型で対応する量産製品には向かないため、アルミニウムやジェラルミン製のプロダクトのほとんどはアルミ合金を使用していると考えていい。冒頭にあげたサングラスも DVD プレイヤーもそうだし、アップルのパソコンもリモアのトランクもちろん、自動販売機で売られている飲料用のアルミ缶など、いずれもその例外ではない。
ところで、素材としての特性、可能性から再評価の気運が高まっているアルミニウムとは、そもそも、いつ頃からプロダクト史に登場するようになった金属なのだろうか。 アルミニウムの始まりは、手元の資料によれば、歴史的には 1782 年にフランスの A.L. ラボワジェという科学者が、明礬石はどうやら酸化した金属である可能性が高い、という学説を発表したことをその起源とするようだ。この時、ラボワジェが、その物質に命名したのがアルミーナ(Alumine)で、それが現在のアルミニウムという呼び名のルーツとなったようだ。アルミニウムの存在が確認されたのは、1807 年のこと。英国の電気化学者 H ・デービーが明礬石を電気で分解する実験に成功したことによる。この時、命名されたのがAluminumであった。 アメリカでは一時アルミナムとも呼ばれていたそうで、それを聞いてなるほどと膝を打った。と、いうのもイームズがデザインした有名な椅子にアルミナムと呼ばれる一群のアルミニウム合金を用いたシリーズがあり、前々から不思議に思っていたからだった。とはいえ、知ってみるとなんだか拍子抜けするオチではある。 |
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 |  | 削り出しの量産品
閑話休題。さて、プロダクト素材としてのアルミニウムの話だった。 H ・デービーが電気による分離に成功してから半世紀。今度はフランスの化学者 H.E.SC ・ドビルが、遂に化学還元法によるアルミニウム製錬法を発見。続いて、 1886 年にアメリカの C.M ・ホールとフランスの P.L.T ・エルーがほぼ同時期に電解製錬法による実用的な電解製錬法を確立。そして、翌 1887 年、オーストリアの K.J ・バイヤーが湿式アルカリ法によるアルミニウム製造法を発明。現在のボーキサイトからアルミニウムを作る方法は、このバイヤーの方法と前年のホール・エルー法と呼ばれる電解製錬法を組み合わせたものが、そのベースとなっている。 なお、日本でアルミニウム製錬がスタートしたのは、1934 年のことのようだ。
ところで、アルミニウムの加工方法には、金槌と当て金を用いる「絞り」、鋳物彫刻などに適しているといわれる「鋳造」、金槌や機械で打ち伸ばしながら成形する「鍛造」、既製のアルミニウム板を繋ぎ合わせる「溶接」、アルミニウム合金の塊を旋盤などで削る「削りだし」、プレスで成形する「プレス加工」などがある。たとえば、前回紹介した永遠ボディは「鍛造」、前々回のオラクルのプレイヤーは「削りだし」だが、たいていはバイオメガの自転車のように加工しやすくしたアルミニウム合金をプレス加工で成形する方法(但し、バイオメガの場合は、正確には少々、特殊な板をくり抜き、プレス加工する方法が取られている)が主流を占めている。
この文脈でいけば懐中電灯界のマスターピース、マグライトもそのプレス加工と思われるかも知れないが、あくまで堅牢性を重視するこのライトは、航空機のボディにも使用されるアルミニウム合金の塊を「削り出す」方法が採用されている。 世界的に流通するリーズナブルな量産品としては、これは稀ともいえるケースだが、だからこそマグライトは世界各国の警察、軍隊、消防などのプロユースの懐中電灯として、正式採用される品質を誇っているともいえるわけである。 マグライトを製造するマグ・インスツルメント社の創業は 1955 年。ももとは小さなガレージメーカーだったマグ・インスツルメントは、創業社長で機械パーツ製造のエキスパートだったアンソニー・マグリカ氏が、当時の懐中電灯の機能性や品質に疑問を持ち、まったく新しいコンセプトの懐中電灯の試作を自社工場の施設を利用し着手したことから大きな転換を迎える。 マグライトの初期モデルが完成したのは、1979 年。その比類無き耐久性、耐衝撃性、耐腐食性(ボディの内側まで特殊コーティングが施されている)と、緊急時に重宝する信号操作可能な埋め込み式三段階スイッチ、ヘッド部分をひねるだけでスポットからワイドまで調整できるビーム機能、テールキャップを利用したスペアランプ内臓機能などが、セキュリティ業務に関わるプロ達の信頼を勝ち得て、瞬く間に世界的評価を勝ち得ることとなる。 現在、14 エーカーの工場で 400 人以上が働くマグ・インスツルメントでは、警棒代わりとしても使用されるセルシリーズからキーホルダーに使えるミニマグライトまで様々なサイズ、カラーのマグライトを量産し続けている。削りだしアルミニウムを一貫生産で大量生産する製品工場としては世界でもここは量質ともにトップクラスといえるだろう。読者の中にも雨、雪、砂塵、泥などどんなに過酷な条件でも確実に手元、足元を照らしてくれるこの心強いライトを愛車のダッシュボードに常備している方も少なくないはずである。 |
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 |  | 6 年前の輝き
最後にマグライト伝説を語るとき必ず紹介されるエピソードに触れておこう。 アメリカはカリフォルニア州のオンタリオ。ひとりの女性が地下室の修繕中、コンクリートの中に埋もれたマグライトを発見する。そういえば 6 年前、家の改築をしたときマグライトが無くなっって大騒ぎしたことがあったっけ。そう思い出しながら、彼女は何気なくスイッチを入れた。するとどうだろう。そのマグライトは 6 年前と変わらず力強く「光」を発するではないか。マグライトの比類無きタフさを物語る、嘘偽りなしのエピソードだそうである。
問い合わせ先:●株式会社エイアンドエフ TEL:03-3209-7575 |
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